大規模工事不要、低コストで「脱炭素ビル」を実現...変わりゆく京都市が既存建築物のZEB化普及を後押し
パナソニックが連携パートナーになったのは、2023年3月、自社ビルであるパナソニック京都ビルをZEB化改修(ZEB Ready)した功績が大きい。
同ビルではLED照明のダウンサイジング、センサーによる自動制御、高COP(エネルギー消費効率)対応タイプの室外ユニット設置、AIによる空調制御など、既存の設備を省エネ性能に優れた設備にリニューアル。外皮改修などの大がかりな工事を行わず、低コストでエネルギー消費量を大きく減らすことに成功した。
また、屋上や駐車場にソーラーパネルを設置するなど、エネルギー供給ができる施設として対策し、レジリエンスも兼ね備えたZEB化を実現。駐車場に設置された急速充電ステーションは、普段はEV車の充電に、停電時には非常用電源システムとして活用できる。太陽光発電システムを併設することで、災害時にも長時間の安定した電力供給を可能にする。
京都市から全国に拡大する脱炭素
建築主や不動産オーナーに対し業務支援(建築・設備の設計・施工・コンサル等)を行うZEBプランナーという資格があるが、パナソニックは2019年に資格を取得。後発ながら、省エネ設備から太陽光発電、蓄電池までを手掛ける大手電機メーカーならではの強みを発揮している。
京都市内では今後、外皮改修を行わずにZEB化を達成できる見込みが高い建築物を整理した後、現地調査・図面を用いた調査により、詳細な改修手法を検討する。2024年3月には補助金の活用や建築物の所有者への提案など具体的な動きを予定しているという。
「ZEBプランナーとして、京都市で10件、全国で280件のZEB化達成を目指す。220憶円規模の需要を創造することはもちろん、脱炭素を日本全国で進めることは、パナソニックという枠を超えて非常に意義があると感じている」と、パナソニック エレクトリックワークス社の近畿電材営業部京都電材営業所所長、橋本文隆氏は展望を語る。
長らく守られてきた景観条例により、大規模な建築物が少ない京都市。この古都で成功例を積み重ねることで得られる知見や技術は、今後、他の地域にも生かされる予定だ。
自治体と民間企業との協業は地域経済の活性化や行政課題解決に貢献するだけでなく、国全体のカーボンニュートラル達成の一助となることが期待されている。