最新記事

自動車

軽自動車でもEVはまだぜいたく品? 買っていい人、やめた方がいい人の条件とは

2022年8月21日(日)12時40分
山崎 明(マーケティング/ブランディングコンサルタント) *PRESIDENT Onlineからの転載

エアコン使用、渋滞で走行可能距離が大きく減少

初日は横浜にある日産自動車でサクラを借り入れ、ひとまず自宅まで走ることとした。受け取ったときの充電量は100%で、走行可能距離は159kmと表示されていた。

しかしその日は最高気温33.6℃を記録した真夏日であり、A/Cボタンに手を伸ばした。ボタンを押した瞬間、走行可能距離は129kmと一気に30kmも減少したのである。

ルートは高速を使わず一般道を走行したが、この日は横浜市内も藤沢市内も渋滞が激しく、停車している時間が長かった。こうなるとバッテリーの電気は走行するためではなく、エアコンを動かすためにひたすら消費されることになる。

藤沢の自宅までの走行距離は24.1kmだったが、到着時のバッテリー残量は76%と約4分の1を消費し、残った航続距離は97kmと表示された。電費表示は5.5km/kWhである。

エアコンがオンで渋滞だったとはいえ、軽自動車としては期待を下回る電費だ。その後近くのスーパーへの買い出しに行くなど、通常通りの使い方をして、67%、走行可能距離86kmという状態で1日目を終えた。

自動車専用道は想像以上に快適

続いて2日目は、妻と横浜中華街までランチに出かけることにした。わが家では週末にはよくある外出である。

今回はレストランの予約の時間もあるため、一般道の渋滞を避け横浜新道と首都高速を使って行くことにした。

ここで驚いたのが、自動車専用道でのサクラの快適さである。

BEVだから音が静かで、ガソリン車のアイと比べるとその差は圧倒的だ。そのうえ横浜新道と首都高速横浜線の流れに乗る程度の速度では、まったく不満のないパワーもある。そのうえバッテリーを床下に搭載しているため重心が低く、安定性も申し分ない。軽自動車に乗っているということを忘れてしまう乗り味である。

アイで遠出をする気にはなれないが、サクラならロングドライブも苦ではなさそうだ。この車には運転支援システムのプロパイロットも装備されていたのでなおさらである。

実際の走行距離は「100km程度」

しかしサクラの航続距離は短い。日産はちょっとサクラの走行性能や装備を実際の想定用途よりよくしすぎたのではないか。もう少しベーシックな仕立てで価格を安くしたほうが実際のニーズにはより合致していたと思う。

ほとんど渋滞がなく、中華街に到着したときのバッテリー残量は47%、電費は7.5km/kWhと前日より大きく向上した。やはりエアコンオンの場合、渋滞の有無は電費に大きく影響するようだ。

家に帰った時点でのバッテリー残量は22%、走行可能距離は38kmであった。前日同様、その後買い物に出かけたり、高齢者施設にいる母親を訪ねたりしたため、この日は最終的にバッテリー残量10%、走行可能距離18kmとなった。

通算走行距離89kmで残り10%なので、この2日間の走行パターンの場合、実際走行できる距離はギリギリ100km行くか行かないかというところだ。

30分の急速充電は12kWh程度

藤沢市役所で充電中のサクラ

藤沢市役所で充電中のサクラ  写真提供=筆者

翌日に備え、充電を行うこととした。まだBEVを所有していない私の家には充電設備がない。そこで、最も近いところにある藤沢市役所の急速充電器を使うこととした。ここは数少ない無料で充電できる充電スポットである。

市役所に着くと、なんと充電中の先客がいて、その車の充電が終わるまで10分ほど待つ必要があった。その後充電を開始し、充電完了まで30分待つ必要がある。しかし藤沢市役所内には椅子がたくさんあり、コンビニも併設されているので、飲み物を飲みながらクーラーの効いた空間で快適に待つことができた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 

ワールド

和平望まないなら特別作戦の目標追求、プーチン氏がウ

ワールド

カナダ首相、対ウクライナ25億ドル追加支援発表 ゼ

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中