最新記事

利上げ

韓国の不動産投資ブームが利上げで暗転 借金抱えた消費者に重圧

2022年8月1日(月)14時38分

キウム証券のアナリスト、セオ・ユンスー氏は「韓国の金融システムは世界で最も金利上昇に弱い部類に入る。パンデミック期間中の債務増加幅は世界有数だった」と語る。

「最も大きな問題に直面するのは、最近になって住宅ローンと(投資のための)融資の両方を受けた人々だ」

住宅ローン金利はさらに上昇へ

韓国銀行(中央銀行)は昨年8月以来、累計175ベーシスポイント(bp)の利上げを行った。今月は過去最大の50bpの利上げを実施している。

現在2.25%の政策金利は、年末までに2.75%に上昇してピークを迎えるとの見方が多い。既に9年ぶりの高水準に達している住宅ローン金利はさらに上がり、多額の債務を抱えた家庭を締め付けそうだ。

ソウルの住宅価格は過去5年間で2倍以上に高騰した。景気刺激策にあおられた住宅購入から始まり、やがて不動産投機は国民的な「娯楽」へと発展。融資規制が強化され、30代を中心とするミレニアル世代の多くが経済的苦境に陥っても投機は止まらなかった。

韓国の家計債務の対国内総生産(GDP)比率は第1・四半期に104.3%と、世界屈指の高さだったことが、国際金融協会(IIF)が示す主要36カ国のデータで分かる。

規制当局は家計債務が金融システム全体にもたらす影響を和らげようと、固定金利での借り換えを可能にする措置を導入した。この救済策が発表されたのは、韓国中銀が予想外に50bpの利上げに踏み切って2週間たってからだ。

秋慶鎬・企画財政相は今週、「家計債務の構造を迅速に改善する」と表明。「借り換え策が始動すれば、家計債務に占める変動金利債務の割合は78%から73%弱へと、最大5ポイント低下するはずだ」と述べた。

可処分所得に対する債務の比率は、昨年末に206%に達した。

前出のジョンさんは「私たちの財産はマンションが全てだから、何とかやりくりしていく。ソウルから出て行くなんてまっぴら」と語った。

(Cynthia Kim記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は4日続落、米エヌビディア決算控え売買交錯

ワールド

ウクライナ西部で爆発、ロシアがミサイル・無人機攻撃

ビジネス

東京海上、発行済み株式の4.2%上限に自社株買い 

ビジネス

中国人民銀、最優遇貸出金利据え置く見通し 6カ月連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中