最新記事

経済制裁

航空機リース各社、ロシアで続々損失 保険会社と激しい戦いへ

2022年5月17日(火)09時17分

法律の専門家によると、最も大きな問題は、ロシアの債務不履行にまつわる保険金支払い「事由」の件数で、それに関する判断が保険金額を大きく動かす可能性がある。

ドバイに本拠を置くDAEキャピタルは保険金を回収する見込みであり、5億3800万ドルの減損処理は「対応可能」だという。フィロズ・タラポアCEOは「ただ時間だけは掛かる」と語った。

盗んではいない

数々のリース会社が減損処理を実施し、保険金を請求しているが、ロシアの民間航空会社と何らかの接触を保っていると明かすリース会社も多い。ロシアの航空会社は近年、欧米リース会社への依存を強め、支払いも滞りなく行ってきた。

いずれのリース会社も、制裁は厳格に守っていると主張する。

ウィリス・リース・ファイナンスのダン・コールチャー最高商務責任者(CCO)は「各社そろって同じ戦略を進めている。保険請求を行いつつ、航空会社と協議している。しかしロシアの航空会社に許されている行為は多くない」と言う。

航空機を借りているロシアの航空業界は、ウクライナ侵攻前は魅力的な市場だった。リース会社によると、航空会社は将来のビジネスに対して完全に扉を閉じることは避けたいが、ロシア政府から関係を断つように強い圧力を受けている。

エア・リース・コープのジョン・プルーガーCEOによると、ロシアの航空会社の多くは電話でこう言ってくる「分かってくれ、われわれは詐欺師ではない。あなたがたの航空機を盗んではいない。リース料を支払いたいのだが、われわれは両方とも身動きが取れなくなっている」。

航空会社関係者の中には携帯電話を避け、プリペイド式電話を使ったり、社から離れた場所で会合を持つ者もいる。

「誰が聞いているか分からないと懸念しているのは明白だ。そして、その恐怖は危機が進むにつれてエスカレートしていった」とプルーガー氏。対話は続いているが、「より慎重になっている」という。

専門家は保険金請求合戦でリスクに対する姿勢が全般的に悪化するのではないかと危惧している。

「もっと大きな問題は、頭文字がCのアジアのはるかに大きな国で同じことが起こるかもしれないということだ」と話すのはワールド・スター・エビエーションのパートナー、マーク・アイアキー氏だ。「業界全体に対するショックはもっと大きいだろう。しかし、その可能性は十分にある」と注意を促した。

(Padraic Halpin記者、Conor Humphries記者、Tim Hepher記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中