カタールがサッカーW杯2022に巨額投資 宴の後の失速に懸念
カタールの企業や民間投資家は政府の支援を受け、何十億ドルもの資金をショッピングモールやホテル、住居用物件、テーマパークといったベンチャー事業に投じている。
カタール計画・統計局の2021-23年経済見通しによると、これまでのところ政府を後ろ盾とした建設ブームは非エネルギー部門経済をけん引しており、建設部門はGDPの約12%を占めている。
建設業はカタールの労働人口の約半分を占め、そのおかげもあって人口は2011年から67%増えた。
だが、建設ブームの終了に伴い、非エネルギー部門経済は減速する見通しだ。
不動産業者やアナリストの話では、新たなマンションは国内全体で少なくとも6万4000室がW杯の観客の宿泊用に確保されている。このため現時点では住居への需要は強く、開幕に向けてさらに強まる見通しだ。
しかし、W杯後に部屋が空くと、市場に物件があふれ返る恐れがある。
ガスへの回帰
世界最大級の液化天然ガス(LNG)生産国であるカタールは1人当たりの資産額も世界屈指で、人口約280万人の85%は外国人居住者だ。
だが、国際通貨基金(IMF)の推計では、W杯後には人口が年間約1.2%のペースで減少し、27年には250万人になる見通しだ。
東南アジアから来た建設作業員の多くも、建設ブームの収束に伴って出国すると見込まれている。
ジョージタウン大学カタール校の経済学教授、アレクシス・アントニアデス氏は、終わりが近いプロジェクトに取り組んでいるエンジニアやデザイナー、管理者といった高給のホワイトカラー専門家もカタールから離れると話した。
ルサイルのコンビニの店長、ヨウネスさんが気がかりなのはそこだ。「ワールドカップが終わったら、これらは空っぽのビルになるかもしれない。見て下さい、マンションだらけでしょ。住居が多過ぎる」と建物群を見上げた。
IMFはカタールの経済成長率について、今年はW杯効果で3.4%になるが、24年には1.7%に減速すると予想している。
ただ、たとえ非エネルギー部門経済への投資が実を結ばなかったとしても、天然ガスが再び経済を支え続けるだろう。ロシアのウクライナ侵攻が世界的なエネルギー危機に拍車をかけ、LNGの需要は強まっている。
IMFの予想では、カタールの経済成長率は、新たなLNG生産施設が稼働する27年には3.8%に回復する見通しだ。
(Andrew Mills記者)