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経済制裁

ロシア、いよいよデフォルトへカウントダウン 想定されるシナリオまとめ

2022年4月11日(月)16時34分

◎誰がデフォルトと認定するか

デフォルトは「状態」であって格付けではないが、市場はしばしば格付け会社によるデフォルト認定に注目する。

ロシアを「選択的デフォルト」に認定したS&Pは、投資家が受け取ったルーブルを30日の猶予期間内にドルに転換できる、あるいはロシア政府が転換することはない、との見通しを示した。

主要な格付け会社は軒並みロシアの格付けを停止しているため、どのような形でデフォルトが発表されるのか明確ではない。

デフォルトになれば、その影響は広い範囲に及ぶ。

例えば、デフォルトに備えた投資家の「保険」に当たるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が発動される可能性がある。この場合、「決定委員会」が、「返済不履行」事由に相当するかどうかを判断するが、判断が出るのは一般に猶予期間が過ぎた後だ。

ロシアに関するCDSの契約残高は60億ドル前後。

◎モラトリアム宣言の可能性

ロシアが一方的に返済猶予(モラトリアム)、つまり一時的もしくは恒久的な返済停止を宣言する可能性もある。

IMFによると、モラトリアムは返済不履行とは切り離して発表されるか、法制化の形で実行に移されるものだ。つまり、宣言のタイミングは返済不履行の前と後、どちらもあり得る。

メキシコが1982年に行ったように、政府が債務再編に着手するまでの暫定的な返済中止措置としてモラトリアムを宣言する可能性もある。

モラトリアム宣言もCDS発動の契機となり得る。

◎デフォルトの後

デフォルトのリスクがある、あるいは既にデフォルトした債務は、「ディストレスト債」専門のファンドが買い取ることが多い。目的は、債務再編に至った際に利益を上げること、もしくは法廷闘争に持ち込んで補償を得たり資産を差し押さえたりすることだ。

ただ、法廷闘争や資産差し押さえの手続きには長期間を要し、コストもかさむ。過去には失敗に終わった事例が多い。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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