不安に応える 副業のメリットとデメリット
副業・兼業ガイドラインのポイント整理(2020年9月改定)
企業が副業を許可するにあたって気になることに、社員の労働時間の管理があります。
2020年9月に改正された『副業・兼業ガイドライン』(正式名称:『副業・兼業の促進に関するガイドライン』)では、企業や個人が安心して副業・兼業に取り組めるように、労働時間管理や健康管理等について示しています。
ここでは、同ガイドラインでの企業の労働時間管理のポイントをご紹介しましょう。
■労働時間や割増賃金の考え方
法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)や時間外労働の上限(上限単月100時間、複数月平均80時間)は、労働時間を通算して適用されます。
時間外労働の割増賃金は、本業と副業を通算し、時間外労働の上限の範囲内で割増賃金を支払うとしています。
■労働時間が通算されないケース
労働基準法が適用されない事業主、委任、請負、フリーランスなどは、労働時間を通算されません。また、労働基準法が適用されても、労働時間規制が適用されない場合*は、労働時間は通算されません。なお、申告等による就労時間を把握することで、長時間労働にならないように配慮することが望ましいとしています。
*農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密文書取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度の者
■副業の労働時間管理の方法
使用者は、労働者からの申告により、副業・兼業の有無・内容を確認します。その方法として、就業規則等に副業・兼業に関する届出制を定める必要があるとしています。
最後に:中小企業こそ副業を検討すべき
2021年9月、オンラインで開催された経済同友会において、サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏が「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要です」と発言して、話題になりました。発言の翌日に同氏は「45歳は節目であり、自分の人生を考え直すことは重要。早い時期にスタートアップ企業に移るなどのオプション(選択肢)をつくるべきだ」と説明しています。
"新卒一括採用、終身雇用、企業内組合"という日本に根差された人事制度や風土があり、これに反した発言をすると反発にあうことも。しかし、この人事制度や風土は同社のような大企業でも崩れつつあるのです。人材不足に悩む中小企業の経営者は、多様な働き方のオプションを真剣に考えなければなりません。
人には、会社人の側面だけではなく、家族人、地域人、趣味人、友人などの側面があり、さまざまな活動をしています。これと同じように、本業の会社人以外の副業を認めることで、創造力を向上させることができるのではないでしょうか?
複線型人事制度(管理職、専門職、勤務地限定制度、契約社員制度、社内ベンチャー制度、役職定年制度)だけでは、社員のニーズの対応できない時代になったのかもしれません。中小企業こそ副業を含めた多様な働き方に舵を切りたいものです。
【参考】
『2020年労働時間等実態調査の集計結果』/日本経済団体連合会
『多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)』/独立行政法人労働政策研究・研修機構
2021.12.28
[執筆者]
中橋章好
オフィス中橋 有限会社 総務の知恵 社会保険労務士
大阪府社会保険労務士会所属。日本ファイナンシャルプランナーズ協会所属。建設コンサルタント会社総務部勤務を経て、平成12年合同事務所にて創業。平成14年現在の事務所へ移転。平成16年法人設立。