最新記事

日本社会

日本国民の給料がどうしても上がらない決定的な理由 経済要素のほかにも妨げる慣習がある

2021年10月23日(土)12時30分
坂口孝則(調達・購買業務コンサルタント、講演家) *東洋経済オンラインからの転載
世界の賃金格差のイメージ

hyejin kang - iStockphoto

先日、国税庁が民間給与の実態を発表した。令和2(2020年)年の平均給与は433万円となった。内訳は四捨五入の関係で一桁目がずれるが、給料369万円+賞与65万円となっている。国税庁が発表した資料のグラフに、かつての発表数字を追加すると次のような推移となっている。

日本の平均給与の推移

どこを起点にするかによるが、中長期的な推移でも日本人の給与は上がっていない。むしろ下がっているといえる。また、他国が成長するなかで日本人の給与がもし横ばいとしても相対的に貧乏になっているといえるだろう。先日の東京オリンピックの際、外国人メディアが日本の物価が安いと驚いていたのは印象的だった。

日本人の給与が伸びない理由

ところで、この日本人給与が伸びない理由については、さまざまな理由が論じられてきた。

・日本は円安政策だったために、日本企業は企業体質を改革せずとも利益を上げ続けられた。そのために給与も上がらなかった
・GDPの7割を占める中小零細企業は諸外国に比べてIT化が進んでいないため、日本人は生産性が低く、高い付加価値を生み出せていない。無駄な事務作業も多い
・中小零細企業は規模が小さく、淘汰や合併が進んでおらず、構造的に利益を上げられない
・中小零細企業は大企業から価格決定権を奪われており、買いたたかれるため高い給与を従業員に支払えない
・大企業も中小零細企業も、従業員に低スキルの労働を求めており、給与を上げるインセンティブがない
・金融・財政政策の失敗(あるいは不徹底)

おそらく、これらが経済学者や識者のあいだで論じられていた内容ではないだろうか。もちろん、これらを私が否定するものではないし、また学術的に否定する力量もない。ただ、ここでは現場のコンサルタントとして日本人の給与が上がらない現場の実感を述べる。

① 製造業ベースの考え方

IT分野であれば、1人の天才はほかの社員の100倍の価値があるかもしれない。一方で、製造業の組み立てラインを想像してもらえば100倍の差はつかない。個性よりも安定性が求められ、全員が一丸となって品質の高い製品を作り上げる必要がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半でほぼ横ばい、日銀早期

ビジネス

中国万科の社債急落、政府支援巡り懸念再燃 上場債売

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛

ビジネス

インフレ基調指標、10月の刈り込み平均値は前年比2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中