ショッキングな米4月雇用統計が「期待外れ」でない理由
コロナ対策の手厚い失業手当が人手不足を生んでいる? MARCO BELLO-REUTERS
<予想を大きく下回り、衝撃が広がっているが、今回の雇用者数や失業率の統計には慎重に読むべき点がいくつかある。例えば、失業率は確かに若干上昇したが、労働力人口は43万人増加している>
アメリカ経済はコロナ不況を抜け出し、景気回復の軌道に乗ったのではなかったのか――エコノミストやジャーナリストの間で衝撃と戸惑いが広がっている。
5月7日に発表された4月の雇用統計が予想を裏切る内容だったのだ。
好調だった3月と打って変わり、非農業部門雇用者数は前月比で26万6000人の増加にとどまり、失業率も若干上昇した。事前の市場予想では、ワクチン接種の加速を受けて、雇用者数が100万人ほど増えるとみられていた。
「あまりに期待外れだ。景気の見通しについて見方を変えなくてはならない」と、ミシガン大学のジャスティン・ウォルファーズ教授(経済学)は述べている。
この雇用統計をきっかけに、連邦政府がコロナ救済策として手厚い失業手当を支給していることの是非をめぐる論争がさらに激化しそうだ。
ビジネス界(特に外食産業)は、充実した失業手当が人々の就労意欲をそぎ、それが人手不足を招いていると不満を募らせてきた。一方で、コロナ感染への不安が原因で職に就かない人も多いのではないかという指摘もある。
7日に発表されたデータを見る限り、人手不足に拍車が掛かっていることは間違いない。
ホテル・レストラン業界では、働き手の週平均の労働時間が大幅に増えている(既存のスタッフが長時間労働を求められていることを意味する)。それに、平均時給も上昇している(高い給料を支払わなければ人手を確保できないことを意味する)。
ワクチン接種が進むなかで雇用回復のペースが減速したことは、コロナ感染への不安以外の理由で――つまり失業手当が理由で――就労を控えている人が少なからずいる証拠と言えるかもしれない。
共和党の政治家が今回の強烈な数字に激しく反応することは目に見えている。モンタナ州とサウスカロライナ州の知事は既に、産業界の不満に応えて、連邦政府の失業給付プログラムからの早期離脱を表明している。共和党知事の州は続々とこれに続くだろう。
しかし、この1回の雇用統計に過剰反応することは避けたほうが賢明だ。雇用統計は一貫性を欠いた動きを示すことがあり、発表後に数値が大幅に訂正されることも多い。
それに、今回の雇用統計は、慎重に読まなくてはならない点がある。
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