最新記事

雇用

ギネスが認めた「世界最高齢の総務部員」 勤続65年、90歳のエクセル達人が語るITの極意とは

2021年4月12日(月)18時00分
山田 清機(ノンフィクションライター) *PRESIDENT Onlineからの転載

IT導入に「こんな面白いものはない」と興奮

では、ITについてはどうか。

「エクセルとかワードを使うだけで、プログラミングはやらないので創造性には欠けますけれど、エクセルひとつとっても奥が深いんですよ」

サンコーがコンピュータを導入したのは、1981年(昭和56年)のことだが、玉置によれば導入の6年も前から事前教育が行われていたという。6年という長さに再び驚く。

「先代の社長が大阪の青年会議所というところで情報工学の先生と親しくなって、コンピュータの基礎を勉強させてくれたんです。在庫管理とか私が担当している経理事務もコンピュータ化に適しているということで、それまではソロバン置いて、受け取り台帳とか割引台帳とかいくつもの台帳に手書きをしていて、それが間違いの原因にもなったんですが、コンピュータは入力すればいっぺんに合計も取ってくれるということで、こんなに面白いものはない! というのが当時の私の感想でした」

ゴミを入れたらゴミしか出てこない

玉置は好奇心が強く、変化が好きだという。趣味は読書、俳句、短歌、随筆の執筆。

「いい文章を書くには、写生するのと一緒で物事をじっくりと眺めて、その裏側にあることまで感じとることが大切ですね。コンピュータだって、よく知らない人ほど『なんとなく怖い』ってなるんです。私は導入前に6年も丁寧に教えてもらったから、ちっとも怖いと思わなかった。よくわかってない人には、『コンピュータってゴミを入れたらゴミしか出てこない。有効なものを入力するのが大事よ』って教えてあげるんです」

毎朝20分かけて新聞の見出しをチェックし、休日にはスマホでグルメ情報をゲットしておいしい物を食べに行く。読書も好きで、毎週数冊の本を読むという。

「今日は国際女性デー(3月8日)ですから、渡辺淳一さんの『花埋み』を読み返しています。日本で初めての女医、荻野吟子さんの話です」

今日が人生最後の日になっても悔いがない

玉置の働く喜びとは何だろうか。

「サンコーでは常に、誰かの役に立っているか? と問いかけながら仕事をする。これが根本にあるんですね。経理というのもひとりでやる仕事ではなく、たくさんの人の手を経て出来上がる仕事なので、私も後工程の人が仕事をやりやすいということを常に考えながら仕事をしています。仕事の優先順位もそれで決まってきます。

会社全体がそうだから、自分の仕事が人のためになっているという実感を得やすいのだと思います。伝票ひとつ持っていっても、『ありがとう。助かりました』という言葉を聞けるので、ああ、早く渡せてよかったなぁと思って、それが仕事のやりがい、働く喜びになる。私の信条は禅で言う『いまを生きる』ですが、こういう生き方をしていたら、今日が人生最後の日になっても悔いがないんです」

山田清機

ノンフィクションライター
1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』 (朝日文庫)、『東京湾岸畸人伝』『寿町のひとびと』(ともに朝日新聞出版)などがある。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg




今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

デンソーが中計、30年に営業利益率10%以上 株主

ビジネス

中国国際航空、北京・平壌便再開も新規予約停止 今後

ビジネス

東京コアCPI、3月は+1.7% 原油高波及で先行

ビジネス

為替市場でも「投機的動き」、口先介入強化で市場けん
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 10
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中