最新記事

日本政治

新型コロナ地方交付金3兆円を狙う「ハイエナコンサル」 地方は8割外注、その半分は東京へ

2020年6月19日(金)17時00分
木下 斉(まちビジネス事業家) *東洋経済オンラインからの転載

今回の地方創生臨時交付金の4割程度は、例えば外食など、新型コロナで苦しんでいる地元の事業者への支援給付のために活用される、とされています。ということは、残りの6割はやはり地元の独自性が試されることになります。全体の予算が約3兆円なら約1.8兆円。これだけの貴重なお金を、東京のコンサルに食われてしまっては、地方にもう未来はありません。

地方が独自に稼ぎ、リターンを地元に投資し続る仕組み

本来、このような予算はどう使うべきでしょうか。大切なのは、地方が投資し、毎年稼ぎを作り利回りを生むこと。そして、そうしたリターンを地元のために投資しづつけるということです。

例えば、「アフターコロナ」では、自然環境の豊かな観光コンテンツの人気がすでに高まっています。私の周りでも、熊本県上天草など、一見立地不便であっても、熊本都市圏から十分アクセスできるエリアには、緊急事態宣言解除後に多くの人がすでに戻ってきています。

今回の交付金は、こうした今後の自然を活かした観光などのために使われるべきです。港湾や河川、公園のような既存の公共資産を活用して、宿泊、飲食、アクティビティが行えるように整備することに投資するのです。

そして、そこでは熱心に事業に取り組む民間事業者から、自治体がリーゾナブルな占用料をとるようなことを模索すべきなのです。こうした一連の流れをつくれば、「交付金を配って、それを一過性のイベントで使って終わり」ではなく、お金は継続的に地域の稼ぎとなり、自治体にも歳入をもたらします。地方はその歳入を活用して、地元の観光関係者へのサービス品質改善の教育訓練などにさらに投資し、単価を引き上げていくのです。逆に言えば、安いだけを売り物にするたくさんの構造を打破しよう、といったような緻密な戦略が必要なのです。

それには東京、あるいは首都圏の「ハイエナのように電話して営業してくるようなコンサル」は全く必要ないのです。そもそも、電話してくるようなコンサルは暇で3流もいいところです。実績があり、実力のある人たちは常に仕事が多いものなのです。暇な人員を抱えているようなコンサルに、ろくなところはありません。

そんなところに絶対に騙されてはいけません。まずはわからないなりにでも地元の行政、民間だけで、今からでも取り組めることをやればよいのです。

もし、そのような挑戦が駄目になったとしても、結果としては、なんだかんだで地元でお金は回るわけなので、本来の地方に配る目的でつくられた交付金の役目を果たすわけですから、それはそれで良いのです。また、自分たちで考えて失敗した反省は、次の事業につながります。

この5年間で、いいように食われ尽くした、地方のために配られたはずの交付金。本来は、今回の新型コロナショックで落ち込む地方のために配られる交付金を、ハイエナのように寄ってくるコンサルに食われないよう、くれぐれも注意をしていただきたいのです。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認 雇用主が

ワールド

ロシア海軍副司令官が死亡、クルスク州でウクライナの

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ実施へ 景気支援=総裁

ビジネス

午前の日経平均は小幅続伸、米株高でも上値追い限定 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中