「老後2000万円」騒動から1年──コロナ襲来で「つみたて投資」はやめるべきか、続けるべきか
つまり、自分の投資判断が結果的に正しかったかどうかは、"自分以外の多数の投資家が決める"ということだ。これが株式投資の難しい点であり「株式投資は人気投票」と言われる理由だが、「皆がどう考えるか」を事前に知ることなどできないので、短期的な値動きで儲けるのは至難の業だ(単なる運ともいえる)。
短期投資よりも確実性が高い方法が長期投資だ。以降でその理由を説明する。
大事なのは「手っ取り早く儲けよう」と思わないこと
筆者は一般の投資家にとって最も大事なことは、株価の短期的な上げ下げを追いかけたりせず、乱高下に振り回されることなく中長期的にじっくりと投資を"続ける"ことだと考えている。言い換えると「手っ取り早く儲けよう」と思わないことだ。
株価は景気や企業業績、投資家の心理状態(強気か弱気か)などで値上がりと値下がりを繰り返すが、日経平均のようにたくさんの企業からなる株価指数は、長期的には緩やかな値上がりが期待できる"仕組み"になっている。
「長期的に値上がりする仕組み」とは、どういうことか。一般に株価の"下値メド"とされるのが、「株価が1株あたり自己資本に相当する水準」で、これは企業の"解散価値"を意味するとされる。株価が解散価値(=下値メド)より低い場合、理論上その株式を全て買い占めて企業を解散すれば"濡れ手に粟"で儲かるので、下値メドを下回る状態は長くは続かないということだ。
専門的な説明はさておき、2000年以降の日経平均について見てみると、1株あたり自己資本相当の水準(図表4のシャドウ部分=日経平均の下値メド)は趨勢的に上昇してきた。
リーマンショック(2008年)やチャイナショック(2015年)のように多くの日本企業が最終赤字に陥ったときは下値メドの水準が少し下がったが、2000年当時6,500円程度だった下値メドは直近で2万円を超えている。約20年間で3倍超に上昇、年率約6%で切り上がったことになる。
実際の株価は景気変動などに応じて大きく値上がりと値下がりを繰り返したが、下落局面では概ね自己資本相当水準で下げ止まった。さすがにコロナ禍ではショックで一時的に株価が下値メドよりだいぶ売り込まれたものの、すぐに反発した様子が確認できる。
図表4からは、仮に20年前にコロナ禍が襲来していたら日経平均は5,000円割れを避けられなかっただろう。しかし、現在は下値メドが20年前よりずっと高いので、3月の最安値は1万6,500円程度にとどまったと考えられる(もちろん政府・日銀の政策効果もあるが)。