最新記事

日本経済

新型コロナの緊急事態で「売れた」「売れなくなった」商品トップ30

2020年5月15日(金)10時25分
伊藤 歩(金融ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

興味深いのは4位の強心剤である。4月13〜19日では前年比で40.7%だが、2月1週目の時点ですでに前年比73.6%と、3割近く減少していた。時期からすると、外出自粛を原因とみるには無理がある。

強心剤というと、循環器系の疾患を抱える人が持ち歩く西洋薬、それも処方薬を連想しがちだが、この調査の集計対象は市販薬。売り上げが大きく落ちているのは、実は漢方薬なのだ。

市販の漢方薬が売れなくなった理由は

漢方薬メーカーの業界団体である日本漢方生薬製剤協会のホームページには、日本の漢方医学は、奈良時代以降に日本に伝来した「中国起源の伝統医学を基に、日本で独自の発展を遂げた伝統医学」とある。

日本の漢方薬は品質への信頼度が高く、世界シェアは8割とも9割とも言われている。本家本元でありながら数%にとどまる中国を大きく凌ぐ数値だ。

中国人にも人気が高く、処方箋なしで買える漢方の市販薬は、訪日中国人観光客が爆買いしていく製品の1つだった。

厚生労働省が毎年公表している「薬事工業生産動態統計」で、過去25年間の漢方製剤等(漢方製剤+生薬+その他の生薬および漢方処方に基づく医薬品)のうち、一般用の生産金額を集計したものが下のグラフである。

一般用漢方製剤等と医薬品全体の生産金額

2019年度分の公表は今年夏まで待たねばならないので、集計できたのは公表済みの2018年度分まで。2018年度の漢方製剤等の生産金額は1927億円で、このうち一般用はわずか404億円にすぎない。それでも、2014年度から2018年度までの5年間での伸び率は66%。医薬品全体ではおおむね横ばいであるのに対し、驚異的な伸び率だ。

公表済みの月次実績は4月17日公表の今年1月分が直近のもの。この時点では、医療用も含めた生産金額は前年同期比で3割増だった。訪日中国人観光客の爆買い需要喪失の影響が生産金額に本格的に表れるのは、これからだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレなおリスク、金利据え置き望ましい=米アトラ

ビジネス

トヨタ、米に今後5年で最大100億ドル追加投資へ

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模

ワールド

ウクライナ・エネ相が辞任、司法相は職務停止 大規模
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 3
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働力を無駄遣いする不思議の国ニッポン
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 7
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中