最新記事

オンライン決済

次の1兆ドル企業はビザ、マスターか EC広がりキャッシュレス化が追い風

2020年2月3日(月)14時38分

株式時価総額が1兆ドルを超える企業はハイテクやインターネット関連が多いが、次はクレジットカード会社の番かもしれない。写真はビザカード。モスクワで2016年6月撮影(2020年 ロイター/Maxim Zmeyev)

株式時価総額が1兆ドルを超える企業はハイテクやインターネット関連が多いが、次はクレジットカード会社の番かもしれない。

クレジット・デビットカード大手ビザとマスターカードの株価は、いずれも過去1年間に約50%も上昇。1月30日時点の時価総額はビザが約4490億ドル、マスターが約3240億ドルで、米S&P500種総合株価指数の中でそれぞれ7位と11位に付けている。

現在、「1兆ドル企業」にはアップル、マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベット、アマゾンなどが名を連ねる。

どの銘柄も過去3年間の年平均上昇率が今後も続くと仮定すれば、ビザとマスターの時価総額は2023年までに1兆ドルに達し、フェイスブックやバークシャー・ハザウェイを抜き去る。

ビザ、マスター株の上昇に火を付けているのは、オンライン・ショッピングの興隆によるキャッシュレス決済への移行だ。

ビレール・バランスド・ファンドのポートフォリオマネジャー、サンディー・ビレール氏は両社について「順風満帆だ。銀行、消費者、商業者の文字通り中間に位置し、だれもがうらやむ立場にある」と説明する。

リフィニティブのデータによると、ビザとマスターの収入はいずれも過去5年間でほぼ倍増し、それぞれ約230億ドル、約170億ドルとなった。この間、両社の1株当たり調整後利益は、ともに2倍以上に増えた。

モフェットネイサンソンのシニアアナリスト、リサ・エリス氏によると、中国を除く世界で、消費者の買い物に占めるデジタル決済の割合は、10年の28%から現在は43%に拡大した。

エリス氏は「世界中に浸透するにはあと5年から10年かかる」と言う。

エリス氏によると、クレジット・デビットカード市場のシェアはビザが60%、マスターが30%で、アメリカン・エキスプレスは8.5%と後塵を拝している。

ビザとマスターは金融業界の重要な存在であるにもかかわらず、S&P500種指数では情報技術(IT)セクター<.SPLRCT>に分類されている。このセクターで注目を集めることが多いのはアップルやマイクロソフト、インテルなどの株だが、IT株指数の上昇に大きく貢献してきたのはビザとマスターだ。

両社の株価収益率(PER)は、少なくとも過去10年間で最も高くなっている。リフィニティブ・データストリームによると、ビザは今後1年間の予想利益に基づくPERが32倍近く、マスターは35倍。

エリス氏によると、両社のリスクとしては、決済事業での巨大ハイテク企業との競争激化や、世界各地の当局による規制強化が挙げられる。

両社も手をこまねいているわけではない。ビザは今月53億ドルを投じ、金融とITを融合するフィンテックの新興企業プレイドを買収。マスターは昨年8月、北欧の決済グループ、ネッツから企業向けサービス事業の過半数株式を約31億9000万ドルで取得した。

[ニューヨーク 3日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200211issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月11日号(2月4日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【韓国人編】」特集。歌人・タレント/そば職人/DJ/デザイナー/鉄道マニア......。日本のカルチャーに惚れ込んだ韓国人たちの知られざる物語から、日本と韓国を見つめ直す。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中