最新記事

自動車

テスラの新車、問題はヒビが入る強化ガラスよりトラック感ゼロのデザイン?

2019年11月27日(水)10時50分

米電気自動車(EV)メーカーのテスラが21日に公表したピックアップトラック型EV「サイバートラック」は、発表会で窓ガラスの強度を示す実演をしたところ、ガラスにひびが入るという失態を演じた(2019年 ロイター/Tesla)

米電気自動車(EV)メーカーのテスラが21日に公表したピックアップトラック型EV「サイバートラック」は、発表会で窓ガラスの強度を示す実演をしたところ、ガラスにひびが入るという失態を演じた。しかし、22日の米株式市場でテスラ株が6%も急落したのは、窓ガラスだけでなくトラック全体の見た目に原因があるようだ。

同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は発表会で、サイバートラックのデザイン、馬力、頑丈さをアピール。ところが、デザイン責任者のフランツ・フォンホルツハウゼン氏が運転席側の窓に鉄製のボールを投げつけると、ガラスにひびが入った。

「なんてこった。ちょっと強く投げ過ぎたのかな」とマスク氏。しかし、フォンホルツハウゼン氏に後部座席の窓ガラスで再度実演させると、またしてもひびが入った。

「貫通しなかったのは良しとしよう。改善の余地があるということだ」──。

フォンホルツハウゼン氏がハンマーでサイバートラックの車体側部を打つ実演では、車体に傷が付かず聴衆から喝采を浴びた。車体にはマスク氏が運営するスペースXの宇宙船「スターシップ」と同じステンレス(合金鋼)が採用されている。

全米で最も人気のあるフォードのピックアップトラック「F―150」とサイバートラックが綱引きを行い、後者が勝つ動画も上映された。

サイバートラックのデザインには、賛否両論が寄せられている。

金融サービス・コーエンのアナリスト陣は「マスク氏は何カ月も前から(SF映画の)ブレードランーナーにインスパイアされたデザインに熱を上げていたが、あまりにも未来的過ぎて驚きを禁じ得ない。これで彼の夢は、砕け散るのではないかと思われる」と指摘。北米の乗用車市場で最も儲かるピックアップトラック市場に参入したのは歓迎だが「現状のフォルムでは成功しないだろう」と記した。

米ケンタッキー州にあるフォード車販売店のCEOは「面食らったとしか言いようがない。ピックアップトラックはアメリカを『形づくる』大事な車だが、テスラのトラックにそれが当てはまるとはとても思えない」と語る。この販売店で売れるピックアップトラックの大半は作業用車だ。

サイバートラックの宇宙船的なデザインはインターネット上でも、からかいの対象となった。

ユーチューブ(YouTube)で150万人のフォロワーを持つ文筆家のマーク・ダイス氏は「イーロン・マスクの火星植民地的な発想はばかげていると言ってしまったけど、彼にブロックしてほしくないな。サイバートラックがどれだけ不細工か彼に伝えたいから」とツイッターに投稿した。

一方で、「これこれ。未来のレトロ版って感じ」など、テスラファンからはいつも通り支持が寄せられた。

ただ、自動車専門誌の幹部、カール・ブラウアー氏は、最新技術と奇異なデザインの二兎を追うマスク氏のやり方は行き過ぎだと指摘。「テスラのマークが付いていれば何でも買うファンはいる。しかし、トラック市場の本流には切り込めないだろう。快適な場所から踏み出すのを嫌がる人々にとってバリアが多過ぎる」と話した。

[Nick Carey and Naomi Tajitsu

[デトロイト/東京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中