最新記事

テクノロジー

資産運用大手ブラックロック、「スマートリング」で運用担当者の健康管理へ

2019年7月2日(火)16時00分

6月21日、資産運用世界最大手の米ブラックロック(運用資産65億ドル)は、ビッグデータを活用してライバルに差を付けようと、これまでにインターネットや衛星、アルゴリズムなどの活用を図ってきたが、今度は資金運用担当者の健康状態の常時把握に乗り出した。写真はニューヨークで2018年7月撮影(2019年 ロイター/Lucas Jackson)

資産運用世界最大手の米ブラックロック(運用資産65億ドル)は、ビッグデータを活用してライバルに差を付けようと、これまでにインターネットや衛星、アルゴリズムなどの活用を図ってきたが、今度は資金運用担当者の健康状態の常時把握に乗り出した。体が健康で精神的に落ち着いた運用担当者はより良い投資判断を下すとの考えに基づくプロジェクトだ。

試験的に導入されたのはフィンランドのオーラ社製指輪型ウェアラブル機器「スマートリング」。事情に詳しい関係者3人によると、睡眠パターンや心拍数などのデータを収集するもので、欧州株チームの運用担当者の一部が装着している。装着するかどうかは本人の判断に任され、いつでも外すことができるという。

関係者の1人によると、スマートリングは睡眠時間や、投資判断をした場合のストレスの高まり具合を示す心拍数を測ることができる。

関係者によると、プロジェクトを率いているのはブラックロックの行動ファイナンス計画の責任者を務める心理学者で、ストレスや睡眠パターンなどの管理で運用担当者を支援するのが狙い。

運用担当者はプロジェクトへの参加に当たり、行動ファイナンスチームへのデータ提出に同意しているが、データは蓄積および匿名化された形でより広く共有される可能性がある。

関係筋は「個々人が自分のデータを管理して保有し、だれが閲覧したかが分かる。問題は単なる運用成績やリスク管理ではなく、自分の健康だ」と述べた。

関係筋によると、スマートリングが導入されたのは1月で、現在は最大10人の運用担当者が装着している。試験運用が成功すれば本格的に導入されるという。

運用担当者は規制強化や手数料引き下げにより競争面で厳しい圧力にさらされ、資産運用業界はかつてない変化に見舞われている。

今回のプロジェクトは、売買を最小限に抑える指数連動型パッシブ運用の人気が高まっても、最大手のブラックロックが人材能力を最大限に引き上げるために投資を続けていることを示している。

ブラックロックは、プロジェクトは健康促進が最大の理由と説明しているが、従業員の個人データが収集されることを歓迎しない向きもありそうだ。既に成績がことごとく監視されている資産運用業界ではなおさらだろう。

スマートリングの導入で運用担当者の投資判断が改善するかどうかは今後見極める必要があり、関係者によると結果はまだ出ていないという。

Virginia Furness

[ロンドン 21日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有

ビジネス

FOMCが焦点、0.25%利下げ見込みも反対票に注

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中