最新記事

ネット

クラウドファンディング詐欺が危ない

不特定多数の人から寄付金や事業資金を集める大人気のネット募金で詐欺被害が多発

2013年10月28日(月)17時12分
クリストファー・ザラ

Images.com-Corbis/Amanaimages

 ニューヨーク在住の男性が暴漢に襲われ、重傷を負って入院した。そこへ1人の人物が現れ、寄付型クラウドファンディング(ネットで募金集めや資金調達をすること)サイトの「ゴーファンドミー」を紹介した。やってみると、あっという間に治療費の半額くらいが集まった。

 しかし男性はそのお金を受け取れない。弁護士は詐欺の疑いがあると言うし、くだんの人物も「まともな弁護士であることを証明できなければ金は渡さない」と主張しているからだ。

 不特定多数の人から少額の寄付金や事業資金を集めるクラウドファンディングの場合、その募集目的や事業計画の信憑性を見極めるのはかなり難しい。最大手のキックスターターを含め、業者への規制が皆無に等しいからだ。

 治療費を払えない隣人の救済からスパイク・リーの映画製作支援まで、資金調達の手段としてクラウドファンディングは急成長している。1人の拠出額は少なくてもクラウド(群衆)が集まれば大きな額になる。その市場規模は今年、前年比で2倍近い51億ドルに上るという。

消費者団体がキックスターターにF評価

 しかしキックスターターやインディーゴーゴー、ゴーファンドミーなどの企業が、詐欺の被害者が出ないように何らかの対策を取っているかと言えば、答えはノーだ。彼らは、資金を募るプロジェクトの信頼性を保証していないし、詐欺と分かっても返金には応じない。その一方、自社サイトに集まる資金から一定の手数料を差し引いている。

 先日、消費者保護団体の商業改善協会(BBB)は最大手のキックスターターにF(落第)の評価を付けた。BBBのキャサリン・ハットによれば、同社が顧客の苦情に応じず、顧客の信頼を損ねているからだ。

 キックスターターの広報担当者は回答を拒否。だが、ペンシルベニア大学のイーサン・モリック助教(経営学)は、「詐欺は意外と少ない」と主張する。キックスターターの扱った4万8500件のプロジェクトを調査した結果として、少しでも怪しい点のある案件は4%に満たなかったという。膨大な数の人が見ているから、詐欺なら誰かが必ず気付く、だから安心、ということらしい。

 問題はほかにもある。例えばキックスターターの場合は、目標額が集まらなければ不成立となり、1セントも受け取れない。だが、すべてのクラウドファンディングが同じではない。あえてアンチ・キックスターター路線を打ち出すサイトもある。例えばインディーゴーゴーは、目標額に届かなくてもプロジェクトの主唱者には期限内に集まった資金を渡すなど、柔軟なシステムを設けている。

怪しい相手の見分け方

 チャリティーが中心のゴーファンドミーは「個人的に知っていて信頼できる」人にだけ寄付するようアドバイスしているが、これはクラウドファンディングの大前提をひっくり返すような話であり、およそ非現実的だ。

 BBBのハットは、見ず知らずの他人のために寄付集めをするような人間には注意すべきだと言う。「他人の善意に頼ってまでお金を集めようとするのは、たいてい当事者の家族」、そうでなければ眉唾もの。少しでも疑問があったら、ネットで検索してみるのもいいと言う。

 ネットの疑問はネットで解け、というわけか。ペンシルベニア大学のモリックも言う。「自分ですべてを知ろうとする必要はない。クラウドに集まる専門知識を借りればいい」

 なるほど。クラウドファンディングの吟味にはクラウドソースに頼るのが一番らしい。それで「信ずる者は救われる」のならいいが。

[2013年10月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも

ビジネス

米バークシャー、アルファベット株43億ドル取得 ア

ワールド

焦点:社会の「自由化」進むイラン、水面下で反体制派
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 5
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 8
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 9
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 10
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中