最新記事

キャリア

アップルの内側から見た「超国家コミュニティー」

2013年5月22日(水)15時30分
千葉香代子

──ウェブ上にも超国家コミュニティーがあると聞いた。

 アメリカではみんなでソースコードを共有し、みんなで開発を進めるオープンソースのコミュニティーがある。みんな自分の時間を惜しげもなく突っ込んで、ボランティアでOSのリナックスでもブラウザのファイアフォックスでもどんどん作っちゃう。その世界で認められてそこから大企業に就職する人もいる。オンとオフが表裏一体。オンの時間はグーグルやアップルで働いていて、オフの時間はオープンソースのためにコミュニティーでプログラム書いている。

 プログラミングに関する情報収集などはすごく便利。聞けばすぐに情報がくる。例えば顧客管理のデータベースを作りたい、という漠然としたでも、たいてい既に作っている人がいて、そのひな型をダウンロードしてちょっと変えるだけでいいとか。今流行りの3Dプリンターでかわいいアクセサリーを作るためのCADデータやウェブページのテンプレートも山ほどある。

──英語の上にプログラムが書けないと入っていけない世界?

 初歩のプログラミングを覚えれば誰でも入れる。一冊本を斜め読みしたらもうそこへ入って行ったほうがいい。先生がいくらでもいるし、サンプルデータをダウンロードしていじっているうちに覚えられる。

──日本のウェブコミュニティとの違いは。

 日本ではアメリカのようなオープンソースのコミュニティーは成立しにくいと思う。現に、何か情報を探しても日本語だとほとんど出てこない。英語ならいくらでも欲しいものが出てくる。アメリカのオープンソース・コミュニティーに参加している日本人の数もすごく少ない。理由は謎だが、一つは議論の仕方が下手なんだと思う。日本のツイッターで「ビジネス始めるには理念も大事だが金も必要」と書いたら炎上しちゃった。金は不浄のもの、というぐらいの勢い。理念派が多い。物の見方は1つじゃないということがわからないし、自分のポジションを変えられない。だからいくらやりとりしても、理念も金もそれ両方大事だね、というところにたどりつけない。

──『ウェブ進化論』などの著書で有名な梅田望夫は、日本ではウェブ2.0がアメリカのように花開かなかったとあるインタビューで答えていた。なぜ不発だったのだろうか。

 一つには、みんな多数派の側にいたがる。大学に講演に行っても、誰かが質問して「ああ、このレベルの質問でいいのか」と安心するまでなかなか質問が出てこない。周りの顔色ばかり見て自分の立ち位置を決める。それは本当の立ち位置じゃない。アメリカは実名でバリバリ発言する。炎上もあるが、それを煽るような人は「お前は馬鹿だ」と書かれて終わる。
 
日本社会は同質性が強過ぎるがゆえに、少しの差がすごく大きな違いに感じられるところがあると思う。超国家コミュニティーは、そこにイラン人もフランス人もインド人もいる世界。瑣末なことに執拗にこだわり続けるというのはあまりない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FOMCが焦点、0.25%利下げ見込みも反対票に注

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

ガザ交渉「正念場」、仲介国カタール首相 「停戦まだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中