最新記事

インターネット

ウィキを支えた無償投稿カルチャーの落日

2010年9月30日(木)16時07分
トニー・ダコプル、アンジェラ・ウー

書き込むのは10人に1人

 そうした倦怠感はさまざまな場面に表れている。アマチュアユーザーが執筆するブログは、「誰でも情報発信できる」というインターネットの民主的な性格を象徴するものとして早い時期に脚光を浴びたが、ここにきて衰退の兆候が表れ始めている。

 ブログ専門検索サイトのテクノラティによれば、プロのブロガーは増えているが、趣味でブログを書く人は減っている。ブログの約95%は、開設されてすぐに更新されなくなるという。民間調査機関ピュー財団の最近の調査によると、アメリカの18〜24歳の層で自分を「ブロガー」と位置付けている人の割合は、06年から09年の3年間で半分に減った。

 ミニブログサービスのツイッターにユーザーが流れた面もあるだろう。しかし、ツイッターに実際に書き込んでいる人は意外に少ないのかもしれない。09年のハーバード大学の調査によると、ツイッターのすべての書き込みの90%はわずか10%のユーザーの投稿だという。ツイッター利用者のほとんどは、ほかの人の書き込みを読んでいるだけなのだ。

 ピュー財団の調査によると、ニュース記事や意見記事を書いて投稿した経験があると答えたインターネット利用者は、10人に1人に満たない。ブログやウェブサイトのコメント欄に書き込んだ経験がある人は、わずか4人に1人だ。

 一般ユーザーの無償の活動に頼ってきたウェブサイトは、ユーザーのつなぎ留めに躍起になっている。しかし、ユーザーの争奪戦は激しくなるばかりだ。「資源、つまりユーザーの数は限られているのに、それを活用する場の数は昔に比べてはるかに増えている」と、ミシガン州立大学のクリフ・ランピ助教授(オンライン・コミュニケーション)は言う。

 賢明なウェブサイトは、既に対応し始めている。テクノロジー系ニュースサイトのディグは、ユーザーの投票によりトップページの掲載記事を決める方針で人気を集めている。しかし読者は大勢獲得できたものの、記事の投票を行うユーザー数は伸び悩んでいた。そこで年内にサイトを刷新し、サイト上で友達と交流する機能を取り入れることでユーザーを呼び込もうと考えている。

カギを握るのは「ご褒美」

 オンラインショッピングサイトのアマゾンや、店舗の口コミ情報サイトのイエルプ、製品レビューサイトのEピニオンズなど、アマチュアが無報酬で寄せるレビューに依存しているウェブサイトは、レビューアーに何らかの「ご褒美」を与える仕組みを取り入れている。イエルプは、レビューをたくさん投稿したユーザーを招いてパーティーを行っている。

 ゴーカーやハフィントン・ポストなど、読者のコメントが売りもののニュースサイトでは、優れたコメントを寄せるユーザーに、星印による評価や特権を与えるなどしている。YouTubeも、カーネギーホールで演奏したりグッゲンハイム美術館に作品を展示したりするチャンスを呼び水にして、投稿を促そうとしている。

 効果はある。ゴーカーが星印によるユーザーの評価制度を導入して、「星付き」ユーザーのコメントをサイト上で目立ちやすくしたところ、コメント欄への書き込み量が過去最高を記録した。

 とりわけ優れたユーザーにさまざまな特権(ほかのユーザーの書き込みを削除する権利など)を認めているハフィントン・ポストは、どのニュースサイトよりコメント欄への書き込みが活発だと胸を張る。イエルプは、3カ月に100万件のペースで新しいレビューが投稿されていると言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中