最新記事

ウォール街

金融業界の高額報酬には道理がある

2010年1月20日(水)18時26分
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト)

新たな富の創出か既存の富の管理か

 ウォール街の高額報酬をめぐる最近の論争を考えるうえで、こうした状況は参考になる。ウォール街は強欲かもしれないが、彼らの高額報酬は経済とリンクしている。だからこそ、報酬額を外部から規制するのは難しい。

 1960年代以降、金融業界は劇的に変化した。当時、金融機関の主な収入源は顧客が株や債券を売買する際の手数料で、1966年には手数料が収入の62%を占めていた。だが今では金融機関が自ら投資を行っており、2007年の手数料の割合は8%にすぎなかった。

 こうした変化によって、金融機関が経済を不安定化させる可能性は大きくなった。多大なリスクを冒し、それが報われれば巨額のボーナスを受け取れるという報酬体系は、経済危機をさらに加速させた。

 投資銀行の元行員でブルッキングス研究所のダグラス・エリオットが的確に指摘したように、政府は金融システムを救済するために巨額の公的資金を投入したのだから、そのコストを賄うために金融業界に課税するのは理にかなっている(バラク・オバマ大統領も先週、銀行に「責任税」を課すことを提案した)。

 より大きな課題は、社会がどの程度まで、製造業による新たな富の創出でなく、金融業による既存の富の管理に重点を置くかという問題だ。ウォール街の高額報酬は多くの優秀なアメリカ人を金融業界に呼び込むかもしれないが、「他の業界にとってはマイナスだ」と、ニューヨーク大学のエコノミストのトーマス・フィリポンは言う。「金融以外の世界にも優秀な人材が必要だ」

 有能な人材が他の業界にも進むようになれば、経済危機がもたらした希望の光になる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中