金融業界の高額報酬には道理がある
新たな富の創出か既存の富の管理か
ウォール街の高額報酬をめぐる最近の論争を考えるうえで、こうした状況は参考になる。ウォール街は強欲かもしれないが、彼らの高額報酬は経済とリンクしている。だからこそ、報酬額を外部から規制するのは難しい。
1960年代以降、金融業界は劇的に変化した。当時、金融機関の主な収入源は顧客が株や債券を売買する際の手数料で、1966年には手数料が収入の62%を占めていた。だが今では金融機関が自ら投資を行っており、2007年の手数料の割合は8%にすぎなかった。
こうした変化によって、金融機関が経済を不安定化させる可能性は大きくなった。多大なリスクを冒し、それが報われれば巨額のボーナスを受け取れるという報酬体系は、経済危機をさらに加速させた。
投資銀行の元行員でブルッキングス研究所のダグラス・エリオットが的確に指摘したように、政府は金融システムを救済するために巨額の公的資金を投入したのだから、そのコストを賄うために金融業界に課税するのは理にかなっている(バラク・オバマ大統領も先週、銀行に「責任税」を課すことを提案した)。
より大きな課題は、社会がどの程度まで、製造業による新たな富の創出でなく、金融業による既存の富の管理に重点を置くかという問題だ。ウォール街の高額報酬は多くの優秀なアメリカ人を金融業界に呼び込むかもしれないが、「他の業界にとってはマイナスだ」と、ニューヨーク大学のエコノミストのトーマス・フィリポンは言う。「金融以外の世界にも優秀な人材が必要だ」
有能な人材が他の業界にも進むようになれば、経済危機がもたらした希望の光になる。