自家発電ブームに電力会社の反撃が始まった
大規模な発電施設はカネを喰うだけ
だが、電力供給の一定の割合を再生可能エネルギーにすることを義務づけた法案が大半の州で可決されるにつれ、電力会社も渋々ながらソーラー発電の世界に参入してきた。要は、そうする以外に選択肢がなかったのだ。
屋根にソーラーパネルをつける代わりに彼らが選んだのは、巨大な太陽光発電施設を建設し、利用者から電気料金を徴収することで利益を上げるというお得意のアプローチだった。実現すれば膨大な電力を生み出せるが、実際には多くのプロジェクトが審査の過程で頓挫し、実際に電力を供給しているケースは今のところわずかしかない。何千キロにもわたって新たな送電線を敷設するには巨額のコストがかかるうえに、建築規制や土地収用をめぐるお役所仕事に振り回されるという事情もある。
05年に発令された連邦法によって、15年までに再生可能エネルギーを1万メガワット増産することが定められた。当初はその大半を大規模な太陽光発電施設が供給すると考えられていたが、4年経った今もその気配はない。
ネバダ州の砂漠に建設されたアメリカ最大の太陽光発電施設は07年に稼働を始めたが、電力供給は合わせてわずか78メガワット。最も野心的な目標を掲げるカリフォルニア州では、10年末までに州内の電力供給の20%を再生可能エネルギーに切り替えることが義務づけられている。だが現在のペースでいけば、目標達成はとても無理だ。
電力会社によるバックアップは必要だが
「電力会社は電力網の支配を守り、100年間続いたビジネスモデルを維持することばかり気にしている。クリーンな電力をつくることには興味がない」と、太陽光発電施設への反対運動を率いているジム・ハーヴィーは言う。彼は、ソーラー自家発電だけで国内の再生可能エネルギーをすべて供給できると信じている。
電力量だけを考えれば確かに可能かも知れないが、実際にはあまりに野心的すぎる目標だ。一元管理された電力供給システムがなければ、信号や街灯の電力を誰が負担するのか。雨が1週間降り続いたら? 太陽光による電力を確実に貯蔵できる方法が開発されていない以上、自家発電を支えるバックアップ体制は必要だ。
だからといって、太陽光による自家発電ブームの意義が損なわれることはない。昨年、ソーラー自家発電による電力供給の増加量は電力会社の10倍以上に達した。
それが可能になったのは、州や連邦政府の補助金のおかげだ。ソーラーパネルの発電コストが、06年の1ワット当たり9ドルから6ドルに下がった影響も大きい。
「あと10年は無理だと思っていた低価格でソーラーパネルを販売できるようになった」と、スタンダード・リニューアブル・エナジー社(テキサス州)の創設者ジョン・バーガーは言う。07年には150万ドルだった同社の収益は、今年は5000万ドルに達する見込みだという。
電力会社の話題になると、バーガーの口調は一段と熱を帯びる。「ソーラー発電が登場した当初、彼らはそんなものは無視できると思っていた。その後、自分たちが独占できると考えたが、自家発電との競争が勃発し、今では恐れを感じている」