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先月末にエジプト政府が国内のインターネット網を遮断してから数時間後、意外な人々が状況打開に乗り出した。世界のハッカーだ。
すべての始まりは、アメリカの起業家シャービン・ピシェバーがネット遮断直後に書き込んだツイート。エジプトにある普通のノートパソコンをインターネットルーター化するソフトを現地に送りたい、そのため力を貸してほしい──。このソフトを使って、パソコンからパソコンへメッセージを順次送っていく形の通信網「メッシュネットワーク」をつくろうというのだ。
世界の技術者たちはピシェバーのメッセージを次々に広め、このプロジェクトへの協力を申し出た。ルーター機能を使えば近くの人との通信は可能になる。もしネットワーク内の1台がダウンしても、別のパソコンを通じたルートを探してメッセージを伝達できる。
「携帯型の臨時ネットワークはつくれる」と、ピシェバーは言う。「最低でもエジプトの人々は連絡を取り合って団結できる」。ネットワーク内の誰かが外部との通信手段を得られれば、それをネットワーク内の人たちと共有することもできる。
いち早く呼び掛けに応えたのは、米ミシガン州でIT企業を経営するゲーリー・ジェイ・ブルックス。彼はすぐにウェブサイトを開設し、世界の技術者からのメッセージをまとめ始めた。エジプト国内のワイヤレス技術の専門家にも連絡を取った。アメリカの技術者たちが持ってるソフトの「部品やかけら」を組み合わせれば、誰でも簡単に使えるソフトができると、ブルックスは言う。
パソコンにこの機能が内蔵されていなくても、メッシュネットワークをつくる手だてはある。ピシェバーに連絡してきたカナダの技術者チームは、メッシュネットワークのソフトを内蔵したレンガほどの大きさの小型ルーターを開発した。「リュックや車でこうしたルーターを何台も持ち歩き、街中や山、屋根の上にセットして回る。そうすれば遮断できないネットワークをつくり出せる」と、ピシェバーは言う。
おそらくエジプトのネット接続は、携帯型ルーターが完成する前に回復する。それでもピシェバーが完成を望んでいるのは、抑圧的な政府を持つ他の国々でも活用したいと考えているから。イランやシリア、イエメンがエジプトと同じ事態に陥らないようにすることが彼の目標だ。
[2011年2月16日号掲載]