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ルラ後のブラジル
新大統領で成長は第2ステージへ
BRICsの異端児の実力は
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国家が牛耳る石油大国のワナ
埋蔵量800億バレルとも言われる巨大油田の権益がルラ大統領の野望に火を付ける
ブラジルの国営石油会社ペトロブラスが、同国南部の大西洋沖の海底に巨大油田を発見したのは07年のこと。以来、普段は冷静沈着な政府高官も「ハイ」になりっぱなしだ。
油田の存在が確認されると、ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領はヘリコプターで沖合の採掘現場へ駆け付け、作業服にヘルメット姿で原油に手を浸すパフォーマンスをしてみせた。
首都ブラジリアでは9月22〜23日、この油田に関するセミナーが開催された。ディルマ・ルセフ官房長官は基調講演で「正確な埋蔵量は今のところ予測もつかない」と発言。「神はブラジル人であるに違いない」と言ってのけた。
油田の発見までには長い試行錯誤があった。開発担当者は海面下7000メートルの地点を試掘。海底の岩や砂層のさらに下方、南アメリカ大陸棚の岩塩層下のプレサル層に驚異的な量の原油が眠っていることを探り当てた。
この深海にあるプレサル層油田の3つの地域の確認埋蔵量の合計は90〜150億バレル。西半球でこれほどの量の原油が見つかったのは30年以上ぶりだ。
だが、驚くのはまだ早い。試掘油井のテスト結果を見る限り、油田の総面積はイタリアの国土の約半分に相当する14万9000平方キロ、埋蔵量は最大800億バレルに上ると、専門家は言う。しかも埋まっているのは上質の軽質油。ルラに言わせれば「ブラジルは当たりくじを引いた」のだ。
同時に破滅の可能性も手にしてしまった。石油はカネを生むが、経済発展も生み出すとは限らない。エコノミストが言う「オランダ病」がはびこるせいだ。
北海で天然ガス資源の開発が進んだ60年代から、オランダには大量のドルや国外からの投資が押し寄せた。おかげで通貨ギルダーの為替レートが上昇。オランダの輸出業や国内産業は低迷に陥った。
こうした現象は貧しい国で起きることが多い。その一例が、70年代にオイルブームに沸いたナイジェリアだ。IMF(国際通貨基金)の研究によれば、70〜00年までの間にナイジェリアの1人当たり所得はわずかに減少したにすぎないものの、1日1ドル以下で暮らす最貧困層は3600万人から7000万人に増加した。
ベネズエラでは、ウゴ・チャベスが大統領に就任した99年当時、原油生産量は日量300万バレル近かった。だが現在、その量は220万バレルに低下。優良企業だったベネズエラ石油公社(PDVSA)は政府のための会社と化し、国内の貧困問題はほとんど改善されていない。
ブラジルは産油国に付きまとう呪いを避けることができるのか。ほんの2〜3年前なら、ばかばかしい問いだと一蹴されただろう。ブラジルといえば、エネルギー分野の優等生じゃないか、と。
ブラジルの再生可能エネルギー利用率は今や世界1位。発電電力量の8割が水力発電で賄われ、乗用車の半分はサトウキビを原料とするエタノール燃料で走っている。ペトロブラスはプレサル層油田を発見する前から、優れた技術や先駆的な投資計画によって世界で最も収益性の高い石油会社の1つになっていた。
ブラジルは08年にエネルギーの完全自給を達成。既存の油田(確認埋蔵量は約140億バレル)の生産日量が200万バレルと、初めて国内需要を満たした。