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狭い空間を快適に変える「お家芸」
アズビー・ブラウン(建築デザイナー、金沢工業大学未来デザイン研究所所長)
柔軟な発想 ロフトを寝室に活用(左)、わずか9坪で快適な住空間を追求した「すみれ・あおいハウス」(右上)、縦長の窓で明るい家に(右下) Courtesy of Azby Brown (3)
日本の伝統建築と現代建築に魅せられたアズビー・ブラウン(52)は、エール大学在学中に留学した日本で、思いもよらない「建築」に心を奪われた。狭小な土地を最大限に使う住宅建築や、狭い空間の有効な利用方法だ。
来日した当初、彼はまず寮のユニットバスに驚いた。「洗面台を動かさないとトイレが使えない構造のものもあった」とブラウンは笑う。ユニットバスだけではない。布団を圧縮して収納すること、アメリカの半分以下の容量なのに使い勝手がいい冷蔵庫......驚きは彼の研究対象になり、93年にはさまざまな空間利用のテクニックを紹介する英語の著作『スモール・スペース』を出版することになった。
「日本では建築家や大工だけでなく、家具メーカーも住宅メーカーも空間の有効利用を考えている。また主婦向けの雑誌では、住む側から膨大なアイデアを発信している」と、ブラウンは言う。海外でもすき間家具は売られているが、「日本に住む人が見たらあくびをしてしまうかもしれない」
05年にブラウンが出版した『ベリー・スモール・ホーム』は、取り上げる対象を日本の家具から住宅建築に広げたものだ。日本ではバブル崩壊後、狭小な土地を逆手に取ってユニークな家を建てることが「クールになった」と、ブラウンは指摘する。「家の大きさよりデザインや住み方が重要になった」
本書には、半階ずつずらしたフロアが連続するスキップフロア構造の家など、定番の間取りからはかけ離れた住宅がいくつも取り上げられている。「住む側にとっては『実験』と言えるかもしれない。日本人は伝統的な住み方を捨て、新しい住み方にどんどんチャレンジしようとする傾向がある」と、ブラウンは言う。「そこにエネルギーや創造性を感じる」
日本の面積はこれ以上広くならない。ブラウンを驚かせる家は、今後もまだまだ出現しそうだ。
[2008年10月15日号掲載]