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BP原油流出
史上最悪の環境・産業災害を招いた
深海油田探査の野望と教訓
深海油田探査の野望と教訓
深海に賭けたBPとオバマの誤算
オバマが沖合での石油・天然ガスの探査・開発にゴーサインを出した矢先の大惨事。被害拡大につれ人々の怒りは募りBPの経営危機も深刻に
「アメリカの敵」ナンバーワンは、もはやトヨタ自動車でもイランでもない。イギリスの国際石油資本BPだと、英フィナンシャル・タイムズ紙は嘆く。
4月20日に米ルイジアナ州沖のメキシコ湾の深海油田掘削施設ディープウオーター・ホライズンで作業員11人が犠牲となる爆発事故が起きてから8週間。いまだ原油の流出が止まらず、被害は海洋生物から沿岸の地域住民に拡大。火消し役のはずのBPのトニー・ヘイワードCEO(最高経営責任者)が、「海の大きさに比べれば流出した原油の量など微々たるもの」と発言するなど無神経ぶりを発揮していることもあって、アメリカ人は日増しにBPへの反発を強めている。
それと比例するように、バラク・オバマ米大統領の対応にも不満が噴出。6月7日に発表されたABCニュースとワシントン・ポストの共同世論調査ではオバマに批判的な人が69%に達し、ハリケーン・カトリーナのときのジョージ・W・ブッシュ大統領に対する批判率62%を上回った。
いら立つ世論に背中を押されるように、オバマ政権がBPに科す「罰金」は次第に厳しくなり、BPの株価は事故発生から40%以上下落した。買収やBPの「プランB(バンクラプシー=破綻計画)」が株式市場やイギリス政府の動揺を誘うまでになっている。
原油流出量は既にアメリカ史上最大となり、自然破壊はもちろんルイジアナ、フロリダなど沿岸各州の地域経済に対する影響も甚大だ。事故はなぜ起こり、なぜここまで拡大したのか。再発を防止する手だてはあるのか。
先のABCニュースとワシントン・ポストの世論調査によると、BPに批判的なアメリカ人は81%にも上る。オバマ政権は地域住民への補償や事故対策費用は全面的にBPに支払わせる方針で、BPが負担した事故対策費は既に14億ドルを超える。
イギリス人の年金も減る
さらにケン・サラザール米内務長官は6月9日、掘削作業の停止で一時解雇される労働者の給与の支払いを新たに要求。BPの株価は1日で16%近く急落した。米政権はBPを「決して容赦しない」と、サラザールは言う。
米議会は、BPに配当の支払いを停止して原油流出の被害を受けた数百万人の地域住民への補償を優先させることを求めている。減配に陥るとすれば、92年の景気後退以来のことになる。
ヘイワードらBPの経営幹部は6月16日、こうした険悪ムードを解消するためオバマに会いに行く。配当停止の「手土産」を持参するという報道もある。高配当(昨年は9%)が魅力のBPのような企業が配当を停止するのは、かなり思い切った行為。株価がさらに下落する可能性もあるからだ。
イギリス政府も助け舟を出すつもりでいるようだ。キャメロン新政権のビジネス・イノベーション・技能相、ビンセント・ケーブルが先週語ったように、巨大企業BPに何かあればイギリス経済にも直接間接に重大な影響が及ぶ。
昨年BPが支払った配当総額は100億ドルに上り、イギリスで支払われた配当全体の約14%を占めた。イギリスではほとんどすべての年金基金にBP株が組み込まれており、国内で1800万人、人口の30%が何らかの形で同社の株式を所有しているといわれる。
デービッド・キャメロン英首相はBP株が急落した翌6月10日に、政府としてBPを支援する用意があると表明。株価は反発した。