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南ア、虹色の未来へ
アパルトヘイト撤廃から16年
驚異の成長、多人種社会の光と闇
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アフリカ大陸、「極貧」の虚像
世界各地で支援を訴える声が上がるが、実はアフリカ全体の今年の経済成長率は5%。発展は南アフリカの改革から始まっていた
一見するかぎり、アフリカの状況は絶望的だ。8億5000万人が暮らすこの大陸は、四半世紀前よりもひどい貧困にあえいでいる。エイズの猛威が大きな要因となり、平均寿命は短くなり、乳児死亡率は上昇している。独立後、一時は繁栄を誇ったジンバブエやコートジボワールでさえ、内戦による混乱に見舞われた。
7月6日から3日間、イギリスのスコットランドで開催されるG8(主要8カ国)首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)では、アフリカ支援が主要議題の一つに掲げられている。議長国イギリスのトニー・ブレア首相は、アフリカは「世界の良心についた傷」だと訴えてきた。その言葉に、反論の余地はない。
だが実のところ、アフリカを覆う暗いニュースの背後には、明るい光が垣間見える。民主選挙によって選ばれた国家元首は、30年前はわずか3人だったが、今では30人になった。
アフリカの主要25カ国(人口の4分の3を占める)は、着実に経済力を伸ばしている。IMF(国際通貨基金)の予測によれば、今年のアフリカ全体の経済成長率は5%(27表参照)だ。
成長の牽引役となっているのが、10年以上前に南アフリカで始まり、その後に周辺国へ広がった、痛みを覚悟した経済改革だ。「(アフリカの改革は)今や臨界点に達している。それを推し進めていくことが肝心だ」と、南アのトレバー・マニュエル財務相は言う。
つまりアフリカは、先進国の救いの手をただ待っているだけの存在ではない。
サミット開催を目前にした2日、世界各地でアフリカ支援を訴えるコンサート「ライブ8」が開かれた。しかし、本番のサミットでは、債務削減をめぐる準備会合での合意の確認が、唯一の実際的な成果となりそうだ。
これは、世界の最貧国18カ国(うち、アフリカは14カ国)が国際機関から借りている債務をすべて帳消しにするというもの。アフリカにとっては140億ドルの借金が棒引きされる計算だが、債務総額が3000億ドルであることを考えれば、焼け石に水だろう。
ブレアが立ち上げた諮問機関「アフリカ委員会」は、先進国によるアフリカ援助を2010年までに年250億ドル、15年までに年500億ドルに増額するよう求めている。だがフランスやドイツ、日本は異議を唱え、アメリカも独自の援助計画にこだわっている。援助のかけ声だけがむなしく飛び交っているのが現状だ。
今回のサミットの「大義」に疑問を投げかける報告もある。IMFは先週、援助が貧困国の経済成長を促すことを示す十分な証拠はないとする研究結果を発表した。
南アの成功から広がった改革の波
こうした状況の下、アフリカには、自力での経済発展が求められている。アフリカに自助努力の意識が生まれたのは、東西冷戦の終結がきっかけだった。アフリカでは80年代半ばまで、アメリカとソ連が勢力確保のための援助合戦を繰り広げていた。
だが90年代の前半、アパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃に続く南アの新政策が、アフリカに新たな手本を示すことになった。
南ア初の黒人大統領となったネルソン・マンデラは当初、白人が所有する企業の国有化を唱えていたが、方針を転換。財産権の保障を盛り込んだ憲法案を受け入れた。
マンデラと、それに続くターボ・ムベキ現大統領の経済政策は、与党アフリカ民族会議(ANC)と同盟関係にある南ア共産党や労組との軋轢も生んだ。だが、財政引き締めは安定した成長と投資を呼び込み、南アをアフリカ成長の原動力に変えた。