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憲法9条は世界が求める理想だ
ジャン・ユンカーマン(映画監督)
原体験 ベトナム戦争時、戦争放棄をうたう憲法をもつ日本に共感したというユンカーマン
軍事力と交戦権をもつ「普通の国」に──04年1月の自衛隊イラク派遣、翌年の自民党新憲法草案発表という流れが続いていた当時、改憲は必然という空気が日本を覆っていた。世論調査でも改正賛成が過半数を占めた。「9条をもつ平和憲法は世界の人々が求める理想を示している。でも日本では、9条擁護は古くさいアカの主張とみられていた」とアメリカ人映画監督のジャン・ユンカーマン(56)は話す。
そんな風潮に一石を投じたのが、彼の作品『映画 日本国憲法』(05年)だ。世界の識者12人のインタビューを通して、憲法制定の経緯や意義を見つめ直すもの。なかでも9条については、世界でも唯一無二の存在だという新しい視点をもたらした。
ユンカーマンからみれば、改憲のねらいはアメリカの戦争に加担すること。「なのに国内の政治問題とされ、改憲が世界における日本の立場を変えるという認識はほとんどなかった。『世界の中の9条』という大きな枠を提案することが、自分にできる貢献だと思った」
アメリカの大学院を卒業後、ユンカーマンは在日ジャーナリストとして日米安保に関する記事などを書き、86年には『原爆の図』を描いた丸木位里・俊夫妻を追うドキュメンタリー『劫火--ヒロシマからの旅--』を撮った。
戦争と平和に関心を寄せ続ける原体験は、16歳で日本に留学した69年にさかのぼる。当時はベトナム戦争の真っ最中。「ベトナムに行って人を殺せるか」と自問し、アメリカで反戦運動に加わっていた彼にとって、戦争放棄をうたう憲法があり、人々が当然のように反戦意識をもつ日本は「仲間の国のようで居心地がよかった」という。
あれから約40年。アメリカはイラク戦争の泥沼にはまり込んでいる。「日本はイラク戦争に加担したが、悲劇の歯止めになるのが9条であることも理解していると思う」
武力ではなく、非暴力と信頼関係で平和をつくっていくのが「普通の国」──そんな未来のあり方を示す9条が、世界に広まる日をユンカーマンは待ち望んでいる。
[2008年10月15日号掲載]