最新記事

クラウド活用で知的生産性アップ

クラウド化知的生産革命

仕事の効率化から「知」の創造まで
新世代コンピューティングの基礎知識

2010.02.04

ニューストピックス

クラウド活用で知的生産性アップ

ITに多額の投資をしたり人手を割いて管理する時代は終わった。クラウド化でコストを省き知的創造に資源を集中しなければ、企業は生き残れなくなる

2010年2月4日(木)12時08分
ルー・ムーアマン(ラックスペース社最高戦略責任者)

ハイテク企業の経営陣や投資家は常に、画期的なテクノロジーの新しい大波を探し求めている。彼らがいま乗り遅れまいとしている「波」はクラウド・コンピューティングのようだ。

 社外にあるICT(情報通信技術)のハードウエアとソフトウエアをインターネット経由で利用するクラウドなら、コストを大幅に減らせる。クラウドから新しいビジネスモデルが生まれ、既存のハイテク企業を脅かすだろう。

 革新的なサービスには誇大宣伝の影がちらつくものだ。だがクラウドは既にメリットを証明し始めている。

 クラウドのサービスを利用している企業はコストを減らし、効率と創造性を高めている。クラウドの普及が進めば、世界経済の生産性が一気に向上するだろう。

 私に言わせれば、クラウドは「従業員が主導するICT」。クラウドはあらゆるレベルの従業員に便利なソフトを行き渡らせ、より低コストで、より大きな成果を挙げることが可能になる。

ICT部門の管理下から社員を解放

 従業員は今まで社内のICT部門の管理下に置かれていた。だがクラウドを利用すれば、ICT部門の力を借りずに短時間でウェブサイトを立ち上げたり、必要なソフトを調達できる。

 従業員たちは伸び伸びと自分たちの創造力を発揮できるようになる。クラウドは企業内だけでなく、起業にも役立つし、家庭での雑用も減らすだろう。

 クラウドとはサーバーやソフトといったコンピューター関連のサービスを必要に応じて利用し、使った分だけ料金を払うシステム。会社の駐車場に自家発電機を設置する代わりに、電力会社から電気を買うようなものだ。

 クラウドはコスト削減に役立つだけではない。サーバーやソフトの調達や管理といった業務が減るため、企業は今まで以上に本業に力を入れられるようになる。

 これまではトレーニング用ソフトなど従業員向けの新しいツールを導入しようと思ったら、社内のICT部門の力を借りなければならなかったはずだ。

 ICT部門はエンジニアを増やし、サーバー運用の契約をデータセンターと新たに結んだり、セキュリティー体制を整えたりしなければならなかった。初期費用は莫大で、スタートまで何カ月もかかってしまう。こうした手間とコストのせいで、多くの経営陣は新しいツールの導入に消極的だ。

9週間分の仕事が9分で終わる

 だがクラウドがこうした状況を変えつつある。公益企業が電気、水道、電話などのサービスを提供するのと同じように、クラウドのサービスを手掛ける企業は便利なコンピューター資源を低コストで提供している。

 いい例がラックスペース(私の勤務先)やアマゾン・ウェブ・サービス。こうしたプロバイダーのサイトを訪れ、あなたが必要としているサービスが見つかれば、オンラインで申し込める。数分後には、プロバイダーが保有・管理するサーバーにアクセスでき、ビジネスに必要なソフトが利用可能になる。

 サーバー容量を増やしたかったり、新たにソフトを追加利用したいときも簡単に対応してもらえる。先行投資は不要。プロバイダーのコンピューター資源を多くの企業が共有する形になるので、クラウドは安上がりだ。

 パソコンの普及によって、経営者や従業員の生産性は向上した。クラウドの時代が到来した今、必要なソフトをより手軽に導入できるようになっている。

 クラウド企業のサイトで生産性向上に役立つソフトが見つかったら、すぐにでも従業員に使わせることができる。

 クラウドの威力を数字で示すことも可能だ。大半の企業がサーバーの運用準備にかける期間は約9週間。私たちが最近、ラックスペースのサーバーと専用ソフトを使ってブログを開設するテストを顧客にやってもらったところ、所要時間は9分だった。

 しかも運用コストは1時間当たり1・5セント。自社設備やレンタルサーバーで同じことをやる場合より、
はるかに安いはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中