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柳井正、小沢一郎、二宮和也まで
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宮崎駿(1941-)
「制作中は日本の観客のことしか考えていない」
[2005年6月29日号の掲載記事を2006年2月1日号にて再録]
日本で観客動員数1500万人を記録した『ハウルの動く城』。この映画がアメリカに上陸した翌週、ふだんはめったに取材陣の前に姿を現さない宮崎駿が、本誌デビン・ゴードンに本音を語った。海外の反応や将来の展望について打ち明ける宮崎は、ブラックユーモアを漂わせた「前向きな悲観論者」の素顔を見せた。
----なぜ取材に応じる気に?
「もうやってしまえ」と思ってね(笑)。プロデューサーばかりに取材を受けてもらうのも悪いし。
----アメリカの子供はあなたの作品を見て夢中になるか、戸惑うかのどちらかだ。ふだんは、あなたが作るような作品を見る機会がまったくないようだが。
それは日本の子供も同じだ。私は数年に1本のペースでしか作品を作れない。だからその間は、日本の子供も普通のアニメや子供向け番組を見ている。
「いま作っている作品があるけれど、完成するのは3年後だ」と言うと、子供はショックを受ける。私の3年と子供の3年では、かなりの差があることに気づいた。
----アメリカでも自分の作品が成功を収めるよう願っているか。
制作中は日本の観客のことしか考えていない。外国の人にも楽しんでもらえればうれしいが、国際的なビジネスとは考えないようにしている(笑)。おそらく私のプロデューサーは、正反対のことを言っているだろうが。
----ストーリー展開は欧米の観客にとってなじみがない。
話が理解できないという人はたくさんいる。彼らは物語とはこう展開するものだと決めてかかっていて、予想が裏切られると文句を言う。それはおかしいと思う。
----そうした現状を変えるには?
変えられないだろう。型どおりの作品が多いほど、人々の固定観念は強まる。私の父は、最初の3分で結末がわかるようなテレビ番組しか見なかった。
----以前は『千と千尋の神隠し』が最後の作品になると言っていたが、考え直したのはなぜか。
映画監督は「元」という言葉がつかない数少ない職業の一つだろう。一度なったらずっと監督だ。監督に与えられる権威を一度手にすると、手放せなくなる。
----『ハウルの動く城』も最後の作品にはならないと考えていい?
ベストは尽くすつもりだ。今は三鷹の森ジブリ美術館のために短編を作っている。長編作品の構想はあるが、まだ形になっていない。今の世の中は、不安が生活を支配する主旋律になっている。(だからこそ)とんでもなくハッピーなものを作らないと。
----日本ではアニメ産業が衰退しつつあるというが。
死の床についていると言っていいありさまだ。才能ある若手が出てこない。スタジオジブリは若者が働く場所だったはずだが、今ではおじいさんとおばあさんの職場になりつつある。
----押井守監督が以前、あなたは心の奥底で日本を破壊したがっていて、流血シーンの多い映画を撮りたいと思っていると言っていた。
(笑)日本を破壊したいわけじゃなくて、壊されるだろうと考えているだけだ。
----それにしても、押井はなぜそう思ったのだろう。
私が「大地震が起きるなら、さっさと起きればいい」などと言うからだろう(笑)。確かに私の考え方は悲観的だ。でもふだんは、とても前向きな気分でいる。