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「クラウド化」のエコなIT基地は北の大地が育む
「クラウド化」を支えるデータセンターがヨーロッパ北部の小国に建設されるのはなぜ?
ハーバード大学の研究チームが正しければ、「カーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)」という言葉をグーグルで検索するだけで大気中に7グラムの二酸化炭素(CO2)が排出されるという。
グーグルはこの主張に反論しているが、いずれにせよIT(情報技術)産業が地球温暖化の大きな原因の1つになりつつあることは間違いない。IT産業のCO2排出量は、今や総排出量の2%。これは航空機の排出量に匹敵する。
この割合は、今後ますます上昇しそうだ。いわゆる「クラウド化」が進行すれば、当然そうなる。
簡単に言うとクラウド化とは、デジタル情報が1台1台のパソコンの中ではなく、コンピューターネットワークに蓄えられるようになること。この新しいトレンドを意識して、グーグルなどのIT関連企業は巨大なデータセンターを建設し始めている。大量のデータを処理するコンピューターは膨大な量のエネルギーを消費し、そのコンピューターを冷却するためにさらにエネルギーが必要になる。
一方、ここにきてアメリカや西欧の国々はカーボン・フットプリントの削減に向けて動き始めた。そうなると、これまでどおりの場所にデータセンターを設置するのは難しくなる。
そこで脚光を浴びているのが、ヨーロッパ北部の国々だ。デジタル情報は保管場所を選ばないが、エネルギーはそれがつくられる場所の近くで使うほど無駄なく使用できる。その上、寒い土地はコンピューターの冷却に要するエネルギーが少なくて済む。こうした点を追い風に、ヨーロッパ北部のいくつかの国はITビジネスの誘致を目指している。
環境に優しいデータセンターの建設に向けた動きが活発な地域の1つがスコットランドだ。インターネット・ビレッジズ・インターナショナルという企業は潮力発電装置の開発会社と協力して、スコットランドの荒れ海から得たエネルギーで、データセンターを稼働させる技術の開発を進めている。この地域では、潮力発電や風力発電などの再生可能エネルギーで発電量の20%近くを賄っている。
洋上センターの計画も
アイスランドは、スコットランド以上に有利かもしれない。寒冷な気候のおかげでコンピューターを冷却するエネルギーが少なくて済むだけでなく、この国では電力の100%を水力発電と地熱発電で賄っている。しかもそのうちの20%未満しか実際の国民生活では利用されていない。
有利な点はほかにもある。アイスランドは金融危機で国全体が破産状態に陥るほどの大打撃を受けたが、それより以前にヨーロッパ本土と北米との間に海底光ケーブルを敷設していた。「アイスランドのような(小さな)国にとっては、かなり思い切った投資だった」と、首都レイキャビクの郊外にデータセンターの建設計画を進めているバーン・グローバル社のジェフ・モンローCEO(最高経営責任者)は言う。
バーン社が造るデータセンターは面積3万7000平方メートルで、つぎ込む費用は3億ドル。データセンターが稼働し始めればCO2排出量を年間5万トン削減できると、同社では予測している。
ただし、スコットランドやアイスランドなど北の国々の独壇場というわけではない。グーグルは08年、風力と潮力で必要なエネルギーをつくり、海水でコンピューターを冷やす洋上データセンターの特許を取得している。
どちらにしても、世界のデジタル情報は近い将来、今までとはだいぶ雰囲気の違う場所に保管されることになりそうだ。
[2009年9月16日号掲載]