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マット・フラナリー(アメリカ/融資)
ネットを駆使してプチ融資の橋渡し
オレゴン州育ちのマット・フラナリー(30)は、子供のころから起業家をめざしていた。「いかれたとっぴなアイデアをいつも思いついていた」というフラナリーは、毎日一つ新奇なアイデアをひねり出すというノルマを自分に課していたこともあるという。
そんなフラナリーが自分の天職に出合ったのは03年。当時は婚約中だった今の妻ジェシカに説得され、アフリカを訪れたときだ。
ジェシカは東アフリカの小規模な起業家に融資や助成を行うプロジェクトにかかわっていた。もともと教会などを通じてアフリカの子供たちを財政支援する活動をしていた縁で、アフリカに関心があった2人は、1カ月間の旅行中に農村部の起業家に出会い、彼らを応援したいと考えるようになった。
とりわけ印象深かったのは、ウガンダの村で魚を売っていたエリザベス・オマラとの出会いだ。オマラは、村から2時間ほどのビクトリア湖で捕れた魚を仲買人から仕入れていた。そのため儲けは少なく、子供に満足な食事を与えられない。湖までのバス代があれば、仲買人を通さずにすみ、十分な利益が出るはずなのに――。
帰国後、フラナリーはアイデアを練った。インターネット上で広く投資を募り、現地のマイクロファイナンス(小口無担保融資)機関を通じて、オマラのような人々に融資してはどうか。
30カ国から選べる小口投資先
このアイデアを元に、04年までにキバ(スワヒリ語で「合意」の意味)というサイトを立ち上げたが、夢を現実にするのは簡単ではなかった。「人に話しても意義をわかってもらえず、当初は自宅で妻と2人で細々とやっていた」と言うフラナリー自身、軌道に乗るかどうか確信がもてなかった。「1年半頑張って、ようやくやっていけるめどが立った」
社会貢献をしたい人と、経済的な自立のために少額の資金が必要な人。インターネットを活用すれば、この両者をうまくマッチングできる。貸し手は、キバのサイトで紹介されている小規模事業から投資先を選び、クレジットカードで出資する(最低25ドルからの小口出資で、利息はつかない)。
キバはその資金を、現地のパートナーであるマイクロファイナンス機関(MFI)を通じて事業家に融資する。事業家はMFIにローンを返済、ローン期間(通常半年から1年)が終わった段階で資金は貸し手の元に返される。ローンの返済額や各事業の進展はキバのサイト上でチェックできる。
実際、キバの成功のカギはインターネットにある。サイト上で返済実績を示すことで、信頼を確立できた(債務保証はないが、返済率は99・76%にのぼる)。ネットを利用することで、投資機関よりもリスクを恐れない個人投資家を引きつけることもできた。
今ではキバは、創設者の予想をはるかに超えて「成長を遂げている」と、フラナリーは言う。世界約30カ国のMFIの運営者がキバのサイトに情報を次々にアップロード。投資家はそれを見て、イラク北部の美容院やエクアドルの仕立て店、アフガニスタンのパン屋などに出資する。「世界規模の活動だ」とフラナリーは言う。
ちなみに魚売りのオマラは、キバの融資を受けて湖まで仕入れに行けるようになった。地域一帯の村々で手広く商売をし、今では子供に十分な食事を与え、教育も受けさせている。そしてフラナリーは、自分のアイデアへの自信を胸に事業を拡大させていく。
[2007年7月18日号掲載]