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マリー・ソー(中国/人道支援)
現金収入が得られる知識を授ける
米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブル社(P&G)と国連で働いていたマリー・ソー(28)は、民間企業のように利益を出しつつ、社会に奉仕できる仕事を求めていた。
「ずっと人の役に立ちたかった」と、香港出身のソーは言う。「でも国連時代に出合った多くのNGOは、問題解決のためにカネと人を送り込むだけ。現地の人に自力で問題を解決する方法を教えようとはしなかった」
そこでソーは昨年、ハーバード大学ケネディ行政大学院時代の同級生とともに「ベンチャーズ・イン・ディベロップメント(VID)」というNPOを設立した。二つの事業を柱に、「施し」ではない持続可能なサポートを模索している。
一つ目の柱は農業関連プロジェクトへの投資。そこで得た利益を使って、すでに進行中の事業を継続させたり、新たなプロジェクトを立ち上げたりする。
もう一つの柱は、人々に知識を授けること。貧困層に新たな技能を教える活動を通じて、寄付金を待つ代わりに、彼らが自力で生活を向上させられる手段を提供する。
VIDは現在、中国の雲南省西部に暮らすチベット族のために、彼らの唯一の生活の糧であるヤク(ウシ科)を活用した事業に取り組んでいる。「ヤクから現金を生み出す方法を考えた」と、ソーは言う。「医薬品が足りないのも教育を受けられないのも、彼らに現金収入がないことが原因だから」
民間企業は私に向かなかった
そこで注目したのが、ヤクの毛とミルクだ。ヤクの毛はカシミヤのように柔らかいため、希少価値の高い織物ができる。
ミルクはVIDが融資した工場に運ばれ、さまざまな種類のオーガニックチーズ製品に生まれ変わる。これらのチーズは北京のスーパーの店頭に並び、2軒のレストランで食材として採用されている。
ヤクのプロジェクトが本格化した今、ソーは利益という明確な結果を出したいと考えている。「今年の収支はとんとんになりそう。起業してからまだ1年ちょっとだけど、一人ひとりの生活に変化が見られることが何より大切」
支援しているチベット族の人々が最近、収入の一部でパソコンを買った。外部へのアクセスを可能にし、子供たちに教育の機会を与えるチャンスになるだろう。
人々に新たな選択肢をもたらす喜びが、ソーの情熱の源だ。「たとえ私が賛同できないことにお金を使っても、その選択肢を与えられたことをうれしく思う」
ソー自身の今後の選択は明確なようだ。「民間企業は私には向いていなかった。自分の好きなことをできるのはとても楽しい。それだけは変えるつもりはない」
[2007年7月18日号掲載]