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『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
クリスマスにあこがれる魔物たちの寓話
ハロウィーンをつかさどる町の王様ジャック(中央)はクリスマスを主催しようと張り切るが Sipa/amanaimages
この作品を見るときは、両目をしっかり開けておこう。ストップモーション・アニメ独特の映像は、まばたきする間が惜しくなるほど楽しさいっぱいだ。
ティム・バートン(『シザーハンズ』)が製作を手がけたこのアニメ・ミュージカルは、クリスマスやハロウィーンをつかさどる町が別世界にあるという発想に基づいて作られた。舞台は、気取った骸骨野郎ジャック・スケリントン(別名カボチャ大王)が君臨するハロウィーンタウン。配下の鬼やグレムリンたちが、せっせと子どもたちを怖がらせている。
だがジャックは骸骨に載せた王冠がうっとうしくなっていた――お化けなんかもううんざりだ。人生にはコウモリの翼やカエルのスープよりましな何かがきっとある!
確かにあった。たまたま秘密のドアをくぐったジャックは、雪の降る楽しげなクリスマスタウンに迷いこみ、猛烈に感動する。
どうやって祝うのかわからないけど、自分もクリスマスをやってみたい。ハロウィーンタウンに戻ったジャックはすぐに命令を下す。今年のクリスマスはハロウィーンタウンの住人が主催する、と......。
この作品は発想だけでなく出来栄えもすばらしい。小さな子供には少々ひねりが利きすぎているかもしれないが、8歳以上ならジャックのうつろな目の奥に優しげな輝きを見てとれるはずだ。
ストップモーション・アニメは物体を1コマずつ微妙に動かして撮影し、それを1秒24コマで映写することによって生き生きした動きを作る。大変な労力を要するこの古い手法で、従来の限界を超えるスムーズな動きが生み出された。
キャストもユニーク。不気味な怪物ウーギー・ブーギーは、キャプ・キャロウェイ風の詩を感動的に歌う。ヒロイン役はボロ人形のサリー。とれた手足を冷静に自分で縫い付ける。数え上げればきりがないが、これぞバートンの想像力の証明だ。ディズニーのアニメーターとして働いていた頃から、彼はこの企画を夢見ていた。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は、ハロウィーンの季節が来るたびに上映される名作になるかもしれない。
[1994年10月26日号掲載]