最新記事

正しい英語はもういらない?

英会話の科学

語彙力アップのコツ、英語キッズの育て方
メールと電話のビジネス英語、ほか

2009.07.30

ニューストピックス

正しい英語はもういらない?

カスタマイズされた英語の「方言」が世界中で増殖中。発音や文法はもう勉強しなくていい?

2009年7月30日(木)14時26分
カーラ・パワー(ロンドン)

 「ケンブリッジ語学学校」と聞けば、ゴシック建築の重厚な建物で、クイーンズイングリッシュを話すアングロサクソンの上流階級を思い浮かべる人も多いだろう。

 だが、インドのデリー郊外にあるこの学校は、そんな雰囲気とは程遠い。湿っぽい教室には、壊れかけた椅子が並ぶ。ライバルはオックスフォード大学ではなく、ユーロ語学学校。ユーロでは、英語の3カ月コースを16ドルで受講できる。

 「成功するのに必要なものは二つ----英語とコンピュータだ」と言うのは、ユーロの経営者チェタン・クマル。「一つはうちで教えている。もう一つは」と、彼は近くのインターネットカフェを指さした。「向こうでどうぞ」

 イギリスの本家の教師陣がデリーの「ケンブリッジ」を見たら、首をひねるにちがいない。教科書もカセットテープもほとんど使わず、教師は「プライマリー」を「プリムリー」と発音する。

 それでも、街角にある語学学校は、巨大な英語教育産業(インドだけで年間1億ドル規模)の末端にぶら下がっているだけではない。ここは、世界中を巻き込んだ「英語学習革命」の最前線でもある。

 今や英語は、ビジネスとテクノロジーの分野の世界共通語。最近は、政官界でも英語の重要性が高まっている。

 国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルの最近の報告書によると、今後10年以内で英語学習者の数は20億人になり、英語を話す人の数は約30億人(世界の人口の約半分)に達するという。

「自分たちの英語」を堂々と話すべきだ

 ベネズエラからパキスタンまで、世界の親は子供の将来のために英語学校の授業料をやりくりする。

 WTO(世界貿易機関)加盟を果たし、08年に北京五輪を開催する中国は、英語熱で沸き返っている。チュニジアやトルコのように、グローバリゼーションに対処するための武器として、政府が英語学習を奨励する国もある。

 「英語が話せなければ、耳が聞こえず口もきけないのと同じ」と言うのは、中国の四川省に住む12歳の男の子。独学で英語を勉強しているという。

 英語は今、大きな変化の波に洗われている。『グローバル言語としての英語』などの著書があるデービッド・クリスタルによると、英語を話す人のうち、英語を母語とする人とそうでない人の割合は1対3。「第二言語として話す人のほうが第一言語として話す人より多い言語は、過去になかった」と、クリスタルは言う。

 アジアだけでも、英語を使う人は3億5000万人以上。アメリカとイギリス、カナダの人口の合計とほぼ同じだ。中国で英語を学ぶ子供は約1億人で、イギリスの人口より多い。

 英語革命を推進する世界の人々にとって、英語はただ覚えるものではなく、自分流にカスタマイズする対象でもある。おかげで、世界中で「新しい英語」が生まれている。

 フィリピン人はタガログ語交じりの「イングログ」を話し、日本では菓子のパッケージなどに「ジャパングリッシュ」が氾濫。ヒンディー語が交じった「ヒングリッシュ」は、ファストフード店や大学のキャンパスなど南アジアのいたるところで見かける。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

蘭ASML、第3四半期受注額は予想上回る 来年は中

ワールド

ロシア、トランプ氏の「経済崩壊寸前」発言に反論

ワールド

焦点:ネタニヤフ氏を合意に引き込んだトランプ氏、和

ビジネス

アングル:高値警戒くすぶるAI株、ディフェンシブグ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中