最新記事

世界がやきもきするイランの火遊び

イラン動乱の行方

改革派と保守派の対立は
シーア派国家をどう変えるのか

2009.06.26

ニューストピックス

世界がやきもきするイランの火遊び

世界が注視する核開発問題の本当の脅威は

2009年6月26日(金)12時33分

----ねぇねぇマフムード、イランの核開発問題って何? 先生が、調べて来いって言うんだ。

 さようか。では、教えてやろう。核開発問題っていうのは、イランがひそかに核兵器を作ろうとしているんじゃないかという疑惑のこと。核兵器製造に不可欠な「ウラン濃縮施設」をもっていることが02年にバレて、火がついた騒動だ。

 ウランというのは、濃縮すれば原子力発電にも核兵器にも使える材料。そのウランを作る計画を17年間も秘密に進めてたんだから、こりゃ怪しい。だから国際社会は、兵器を作ろうとはしていないと証明しろと迫っている。

----結局、核兵器を作ろうとはしていなかったって聞いよ。

 昨年12月にアメリカのスパイ集団が発表した報告書、いわゆる国家情報評価(NIE)のことだな。それによると、イランは03年に核兵器を作る計画を放棄したという。これまでの「常識」をひっくり返す、ショッキングな発表だった。核の番人、国際原子力機関(IAEA)のトップも、発表にお墨つきを与えている。

 けどな、NIEは信用できないっていう声もあるんだ。アメリカのミスター・ブッシュ自身が信じていないみたいだし、イランと犬猿の仲のイスラエルも「嘘に決まってる」と言っている。

 それに、NIEには「前科」がある。イラク戦争前に、イラクは大量破壊兵器を作っているとNIEは言い張った。それが嘘だったというのは、今では常識だろ?

 だから、どこまで真に受けていいかは、正直、よくわからん。

----でもマフムード、経済制裁はやるんでしょ?

 あたぼうよ! 核兵器は作っていないかもしれないが、ウランの濃縮は続けているからな。いつ核兵器を作りだすかわからないと、欧米はみている。だから、ウラン濃縮をやめるまでは貿易を制限する経済制裁で苦しめますよというんだ。国連の安全保障理事会は今年3月、3度目の制裁をすると決めたな。

----イランは怒っただろうね。

 わしと同じ名前のアハマディネジャド大統領はプッツンきてたな(ちなみに、わしと血縁関係はない)。もうEU(欧州連合)とは話し合わないとたんかを切り、こんなまねをするならIAEAの抜き打ち検査も受けないとも脅している。

 一方でイラン側の核問題の代表は、制裁さえ考え直せば、またEUと話し合ってもいいと言っている。要するに、二つの顔を使い分けてるんだろう。

----なんでイランは制裁をされてまで核開発にこだわるの?

 原子力発電のために平和的な開発をしていると、イランは言う。あの国には石油や天然ガスが多くあるが、それを生かす生産設備や輸送網が不足しているというのが彼らの言い分だ。

 それにプライドもある。イスラエルが核をもっているんだから、オレたちも----そう考えているんだろう。

----じゃあ、これからもイランと欧米のにらみ合いは続くんだ。

 しばらくは、そうだろな。ただ、イラン国内では変化も起きている。3月の総選挙で新しい勢力が台頭してきたんだ。

 彼らは、大統領と同じくイスラム教をベースにした国づくりを主張する「保守派」でありながら、核問題ではもっと妥協していいんじゃないかと考えている。ウランの濃縮をやめることも視野に入れている。

 こうした新しい勢力の代表が来年夏の大統領選に出馬して勝てば、イランの態度も変わるかもしれないね。

[2008年4月16日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

関税の影響を懸念、ハードデータなお堅調も=シカゴ連

ビジネス

マネタリーベース、3月は前年比3.1%減 7カ月連

ビジネス

EU、VWなど十数社に計4.95億ドルの罰金 車両

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中