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日本人 part2
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福原成雄(庭園デザイナー)
日本庭園の美に恋をして
園芸の世界で最高の権威と伝統を誇るイギリスのチェルシー・フラワーショー。チェルシーの最優秀ガーデン賞は造園家にとって最高の栄誉とされる。福原成雄は01年にその栄誉に浴した。出品作のなかにはチャールズ皇太子の委嘱した庭もあったが、それらを制しての堂々たる受賞だった。
もっとも福原の名を広めたのはこの賞だけではない。大阪芸術大学環境計画学科で教壇に立つかたわら、ガーデニングの本場イギリスをたびたび訪れ、日本庭園の「伝道師」として活躍している。
イギリス人の日本庭園好きは今に始まったものではない。イングランド北部のタットン・パークをはじめ、日本庭園は100年も前からあった。ただし、残念ながらこうした初期の日本庭園には、東西の様式の奇妙な折衷や、中国式と日本の混同が見受けられる。
庭づくりの背景にある自然観が理解されないまま、デザインの一部だけが採り入れられたケースもある。「赤い鳥居と赤い橋があれば日本庭園だと思われていた。本来は、自然の景観を生かすことが大切なのに。灯籠1つにもちゃんと役割がある」と、福原は語る。
チェルシーに共同出品した「リアル・ジャパニーズ・ガーデン」は、日本の庭づくりの三様式である枯山水、露地、池泉式を合わせたもの(福原は枯山水を担当)。今は永久保存のためガーデ
造園業者への技術指導も
福原の設計を形にしたイギリスの造園業者スティーブン・スワットンは、「この仕事をしたことを名誉に思う」と話す。「彼は日本庭園の伝統を伝えるだけではない。設計図に託した思想をきちんと具現化できる」
材料の調達には苦労した。福原チームはこけむした石を求めてイギリス中を回った。植木はオランダから運ばせた。幸い今ではイギリスにも日本庭園に欠かせない地衣類を扱う園芸店がある。
ウィズリー・ガーデンやキュー・ガーデンの日本庭園を設計したのも福原だ。タットン・パークの日本庭園の修復も手がけた。修復にあたっては、日本の様式としては奇妙な配置もそのまま保存するよう依頼された。「迷わず引き受けた。(折衷様式も)造園の歴史の一コマなのだから」と、福原は言う。
福原はガーデニング好きのイギリス人相手に講演やワークショップを行うほか、自分が設計した庭園を維持してもらうため現地の造園業者の技術指導も行っている。「何かを創造し、それを評価してもらい、自分のもつ知識を学びたい人に与えられる――こんなに幸せなことはない」と福原は言う。
彼の設計した庭を散策することは、それ以上の幸せだろう。
[2006年10月18日号掲載]