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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
外食は「テーブル長」という名の監視員も一緒──中国の「公序良俗育成」とは?
©2022 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<6月29日から上海市内では外食できるようになったが、客を管理する責任者「卓長」を配置し、ソーシャルディスタンス、時間制限、マスク飲食などをチェック。これが本当にコロナ対策なのか?>
「ちょうど食べかけていたところに老板娘(おかみさん)が慌てて2階に走ってきて、さっと電気を消しながら『静かに! 防疫検査員が来た!』と」
先日、上海の飲食店内を写した1枚の写真が中国SNS上で大量にシェアされた。電気を消した真っ黒な飲食店内。すりガラスに映るのは巡回に来た警察官の影。飲食中の客が息を止めてじっとする様子は、スパイ映画の一場面のようだ。
ゼロコロナ政策で家に閉じ込められてきた上海市民は、6月上旬から本格的に外出できるようになった。
「民以食為天(民衆にとっては食べることが一番大事)」。外出でまずやりたいことは、レストランでのおいしい食事だ。しかしポストコロナ時代の外食から、コロナ前の自由は奪われてしまった。
6月29日から上海市政府は店内での飲食を許可したが、それにはいろいろな条件が付いた。例えば、「店内飲食の卓長(テーブル長)制」。
店内飲食の場合、テーブルごとに責任者を1人推薦し、その責任者が同じテーブルに座っている客を管理する。飲食中の間隔や1時間半の制限時間、食事前後のマスク着用......。上海の調理業界団体によると、公序良俗育成のためには卓長の存在は欠かせないという。
こんなバカなルールは見たことがない、ネットで喧々囂々(けんけんごうごう)たる非難が沸き起こったが、ある市民は投稿で、そのうち上海では店内の全テーブルを管理する「総卓長」や卓長を補佐する「副卓長」まで出現すると皮肉った。いずれ共産党支部まで成立しそうな勢いである。
専門家のおかしな発言も目立つ。ある飲食業研究者は「自力更生が大事。政府から援助を待つばかりでは駄目」と公言した。コロナ禍のこの2年半、中国政府のロックダウンで破産や閉店に追いやられた個人経営の店は数え切れないが、政府から支援金をもらった店は一つもない。コロナ対策違反の名目で罰金を科されなければ大変ありがたい、というレベルだ。
「上に政策あれば下に対策あり」は中国人の知恵だが、こんな的外れな政策ばかりなら自力更生もできない。公序良俗育成のために卓長が欠かせないなら、全ての政府官僚を退職させ、卓長という最小単位の責任者だけ残せばいい。
ポイント
民以食為天
民は食を以て天と為す。後漢時代の歴史書『漢書』にある「王者以民為天、而民以食為天(王は民が大事、民には食が大事)」の一部。中国人にとっての食の大切さを説いた言葉。
破産や閉店
中国国家統計局によると、今年1~5月の飲食業界の収入は1兆6274億元(約32兆円)で、前年同期比8.5%減。5月だけのデータだと、収入は3012億元(約6兆円)で21.1%減。
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