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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
人権無視の防疫措置をした中国で感染者が増え、甘い日本で激減する不思議
©2021 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<自宅から出ていなくても近所で感染者が出ればPCR検査を受けよと警告が。「中国に学べ」という主張は正しかったのか?>
「時空伴随者」―― SF小説の題名のようなロマンチックな言葉だが、これは中国政府の新型コロナウイルス対策の1つ。健康者と感染者が同じ空間(800×800メートル)に10分以上とどまり、それが14日以内に計30時間以上になると「時空伴随者」と認定され、スマホのアプリがPCR検査を受けよと警告する。四川省成都市の「時空伴随者」は、たった数日で8万2000人を超えた。
例えば、ある感染者の自宅が800メートルの範囲内にあれば、ずっと家の中に閉じ籠もっていても「時空伴随者」に認定される。「科学的ではない」と専門家が意見をSNS上に公開したが、直ちに削除された。
ロックダウン、通行規制、住宅街封鎖、強制隔離そして広範囲のPCR検査......という全面的で厳しい防疫措置は、中国人の日常になっている。
上海ディズニーランドで感染者が1人現れると、約3万人の入園者全員がPCR検査を受けるまで帰れなかった。感染者が出た東北地方のある団地では、各戸のドアに封印紙が貼られた。ロックダウンを今年だけで5回繰り返した雲南省瑞麗市では、PCR検査を行いすぎたため、1歳半の子供が医者を見ると習慣的に口を開けるようになった。
全て政府の「零感染(感染ゼロ)」という方針に従い徹底的な対策が行われているからだ。昨年、世界各国の感染者が急増したとき、中国だけが強制手段で一時的な感染抑制に成功した。「自由や人権より命が大事。日本も中国の徹底したやり方に学べ」と考えた在日中国人や日本人も少なくなかった。
確かに、日本は感染者が1日2万5000人を超えたときでも本当の意味でのロックダウンは行わなかった。中国と比べれば、まるで仏様のように優しい「仏系防疫」だ。ところが、必死に「ゼロ感染」を求める中国で今また感染者が増え、強制措置のなかった日本の感染者数が激減している。
ウイルスは政府の強制手段で消えない。消えるのは人間としての尊厳や自由だ。文明社会の防疫は人間性を尊重しながら、ワクチンなどの科学に頼るほうがいい。「中国に学べ」と叫んでいた人たちは、いま何を思うのだろうか。世界の中国への「伴随者」は減る一方だ。
ポイント
零感染
中国政府の新型コロナ対策。患者が1人でも発生したら地区を封鎖し、大規模なPCR検査を実施。感染者を徹底隔離する。
仏系防疫
「仏系」は中国で流行するネット用語。無欲に淡々と内心の平和を求める生活態度を指す。転じて日本の厳しすぎない新型コロナ対策が「仏系防疫」と揶揄された自国産ワクチンの接種回数も20億回を超える。
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