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風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
自分たちを搾取するファーウェイCFOの釈放を「中国の勝利!」と喜ぶ人民たち

©2021 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<カナダで逮捕されたファーウェイCFO孟晩舟が中国に帰国。バブル崩壊危機や大停電に苦しむ国民たちは、帰国に熱狂している>
中国各地で大停電が起きている時、「ファーウェイプリンセス」と呼ばれる同社CFOの孟晩舟(モン・ワンチョウ)が9月25日、政府チャーター機で帰国。そのニュースに全土が沸いた。
ほとんどの中国人はアメリカに勝ったと思い込み、不動産大手の恒大集団で投資に失敗した人々さえ、「彼女は海外で3年軟禁されても不屈だった。われわれは投資した住宅の建設が止まっただけだ!」と興奮した。
1996年設立の恒大集団は中国不動産業界の巨人だったが、今では借金の巨人だ。負債総額は約3050億ドルで、中国のGDPの2%。その最たる被害者は個人投資家だが、彼らは孟のような特権階級にとって、自分たちが好き勝手にできる「ニラ」でしかないことが分からない。
「割韭菜(ニラ刈り)」は中国SNSでいま最もはやっている言葉。ニラは雑草のように刈っても伸び、伸びては刈られる。中国の本当の既得権益者はお金の命脈を握る権力者と彼らにコネがあるその関係者だけ。庶民は刈られるニラでしかない。
中国の不動産バブルには、かつての日本のバブルと本質的な違いがある。中国の土地は国家所有で、売買されているのは70年間の長期使用権にすぎない。土地の使用許可はごく一部の権力者やその関係者が握っている。加えて権力者たちは簡単に公共資産を私物化し、土地価格を高騰させ、企業と結託して暴利を貪る。
中国で汚職事件が相次ぐ理由も、そこにある。今年3月、遼寧省大連市のある区の共産党書記が2714戸の住宅と142台の車を横領し、不正に集めた資産が100億元(約1700億円)に達したと記事になった。区委書記という末端レベルの権力者でさえ世界を啞然とさせる汚職を実行できるのなら......。
鄧小平は「先富論(先に豊かになれる者から豊かになる)」を唱えたが、「先に豊かになれる者」とは権力者や孟のようなその関係者だ。普通の中国人は誰でも知っているが、なぜか彼らの孟への崇拝は絶えない。
始皇帝が万里の長城を自慢するのはまだ理解できる。だがそこに夫を埋められた孟姜女(もうきょうじょ)が長城を自慢するのは、どう考えてもヘンだ。
ポイント
孟晩舟
華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の副会長兼最高財務責任者(CFO)。対イラン制裁措置に違反した疑いにより、2018年にアメリカの要請に基づきカナダで逮捕された。
孟姜女
中国の民間伝説の主人公。秦の始皇帝時代、夫が万里の長城建設の人夫として徴用され、過酷な工事で死んだ。彼女の慟哭で長城が崩壊し、埋まっていた夫の亡きがらが発見されたという。
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