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サム・ポトリッキオ Surviving The Trump Era
過大評価しすぎ? 世界のSNSユーザー数ランキング15位のツイッターに対して、絶大な影響力を感じてしまう訳
マスクは絶大な影響力を持つツイッターをどう変えたいのか PHOTO ILLUSTRATION BY DADO RUVICーREUTERS
<日本はツイッターのユーザー数がアメリカに次ぐ世界2位。だが、ツイッターの世界は実世界を忠実に反映しているわけではない>
ツイッターは、ヘビー級のチャンピオンをノックアウトする力を持った軽量級ボクサーと言っていいかもしれない。ここでクイズを1つ。世界のソーシャルメディアのユーザー数ランキングで、ツイッターは何位か(月間アクティブユーザー数で判断)。
たぶん4位か5位くらい? いや、正解は15位だ(14位はピンタレスト、16位はレディット)。ツイッターの4億3600万人のユーザー数は、フェイスブックの7分の1程度にすぎない。意外に少ないと感じた人も多いだろう。それほどまでに、ツイッターの存在感は絶大だ。
どうして、私たちはツイッターに対して、実際のユーザー数を大きく上回る影響力を感じているのか。
それは、最近ツイッターを買収した企業家イーロン・マスクの表現を借りれば「デジタル世界における街の広場」として機能し、多くの意見や主張が交わされる場になっているからだ。
このプラットフォームが文化や政治、メディアに関する言論に及ぼす影響は極めて大きい。しかも、ユーザー数が多い国の1位と2位は、世界で最も重要な民主主義国であるアメリカと日本だ。
しかし、ツイッターの世界は実世界を忠実に反映しているわけではない。世界の富の大多数を一握りの富豪が保有しているのと同じように、ツイッターの投稿の80%は、わずか10%のユーザーによるものだ。
ユーザーの年齢層にも偏りがある。アメリカのユーザーの42%は18~29歳、27%は30~49歳、18%は50~64歳。65歳以上の割合は7%にすぎない。
メディアが2020年大統領選の民主党予備選と今年11月の中間選挙の事前予測でジョー・バイデンを過小評価した一因は、ここにある。メディアの記者たちは、時にツイッターを世論の鏡のように思い込んでいるが、バイデンの中核的支持層はツイッターの世界の外にいるのだ。
世界規模で見ると、ユーザー層の偏りは一層際立っている。ユーザーのおよそ7割が男性で、女性は3割。80%は裕福なミレニアル世代だ。こうした偏りがツイッター上の政治的・文化的言論に大きな影響を及ぼすことは、想像に難くない。
マスクの目的は「言論の放火犯」になること?
こうした問題に拍車をかけかねないのが、マスクによるツイッター買収だ。マスクは、ラッパーのカニエ・ウェスト(現在は「イェ」に改名)やドナルド・トランプ前大統領など、物議を醸す言動を繰り返す人物のアカウント凍結を解除(その後、ウェストは再凍結)。
ロシアのプーチン大統領の主張を代弁し、新型コロナに関する誤情報の拡散を防ぐ措置を打ち切った。中間選挙では、共和党に投票するよう自らのアカウントのフォロワーに公然と呼びかけた。
マスクは、ツイッターが莫大な赤字を生むことを理解している。買収に踏み切った主たる動機は、お金を儲けることよりも、いわば「言論の放火犯」になることなのかもしれない。ツイッターを利用して、世界の公共空間を自分好みの場に──けんかっ早く、過激な言葉で対立をあおり、へ理屈を弄する自分自身の映し鏡のような空間に──変えようとする可能性が高い。
これまでマスクは、半ば浮世離れした壮大な目標を打ち出して、ビジネスの世界で目覚ましい成功を収めてきた。人類の火星移住を大目標に掲げる人物には、言論空間を自分好みの場につくり変えることなど、たやすい目標に見えているのだろう。
しかし、私の目には、この目標を達成する可能性は、電気自動車ビジネスで成功する可能性より小さいように見える。世界のためを思えば、私の予想が当たってほしいものだが......。
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