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「フェイスブックがデマを流して人を殺す」と非難したバイデンの愚かさ
バイデン(左)の影響力はザッカーバーグに遠く及ばない? FROM LEFT: AL DRAGOーBLOOMBERG/GETTY IMAGES, YASIN OZTURKーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES
<新型コロナワクチンの情報をめぐり巨大SNSを非難した米大統領が残した数々の汚点>
マーク・ザッカーバーグは、軍隊こそ動かせないが地球上で最も影響力のある人物と言っていいだろう。
フェイスブック社のサービスの利用者数は世界で30億人近く。これは、中国、アメリカ、EU、日本、ロシアの人口を合わせたより多い。同社の株式時価総額も1兆ドルを優に突破している。
この世界最大のソーシャルメディアの影響力は、世界のどのリーダーの言葉より強力だ。私たちの思考、情報の取得、そして行動に及ぼす影響の大きさでフェイスブックを上回る存在は見当たらない。
最近、そのザッカーバーグと世界で最も強力な政治指導者が正面から激突している。バイデン米大統領は7月16日、フェイスブックが新型コロナワクチンに関するデマを流し、その結果としてワクチンの普及を遅らせて「人を殺している」と批判した。
フェイスブック側は、これに激しく反論している。同社の副社長は、次のような声明を発表した。
「データによれば、アメリカにおけるフェイスブック・ユーザーの85%は、ワクチン接種を既に済ませたか、接種を希望している。バイデン大統領が掲げていた目標は、7月4日までに国民の70%の接種を終えるというものだった。つまり、大統領の目標が達成できなかったのは、フェイスブックが原因ではない」
バイデンがザッカーバーグにかみつくのは、これが最初ではない。2020年の米大統領選で民主党候補者指名の獲得を目指していたバイデンは、ザッカーバーグを潜在的なライバルの1人と見なして攻撃した。2019年12月のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、ザッカーバーグを「大きな問題」だと評し、2016年大統領選でロシア側と共謀してトランプ前大統領を勝たせるという「犯罪」に近い行為に手を染めた可能性まで示唆した。
しかし、バイデンのフェイスブック批判は、ワクチンデマの件でもロシア疑惑の件でも有効性を欠く。まず、法的に言うと、そもそもフェイスブックのようなソーシャルメディア企業は、基本的にユーザーが投稿したコンテンツの内容について法的責任を問われないものとされている。これは、表現の自由を保障した合衆国憲法修正第1条などに基づくものだ。
今回の行動は、戦術面でも裏目に出る可能性がある。フェイスブックに強圧的な態度を取り、感染症危機の責任を押し付けるような振る舞いは、バイデンが弱々しくて、他人のあら探しばかりしているという印象を強めてしまう。これは、2024年の大統領選で再選を目指す上では得策でない。バイデンは発言を撤回したが、今回の失言はワクチンをめぐる社会の党派的亀裂を深める結果も招いた。
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