コラム

大谷翔平が「神様」ジョーダンやルースも凌駕し得る科学的な理由

2021年07月14日(水)07時00分

33号本塁打を放ちチームメイトに祝福される大谷(7月9日) ABBIE PARR/GETTY IMAGES

<NBA史上最高のプレーヤーも攻守に優れていたがショーヘイの二刀流がそれ以上である訳とは>

アメリカのスポーツ界は今、日本の話題で持ちきりだ。東京五輪の開催国だからではない。アメリカでは2人の日本人アスリートに対する関心が五輪を圧倒している。

まず、テニスの大坂なおみ。史上最も稼ぐ女性アスリートである大坂は、全仏オープンを棄権。ウィンブルドン選手権も欠場して、メンタルヘルスとスポーツに関する初の本格的議論に火を付けた。大坂はサッカーのメッシやロナウドなどに次ぐブランド力を持つ人気選手。その彼女が弱さを率直に告白したことで、世界中のファンとの絆が強まり、今では一般ニュースの最重要ページを飾るまでになった。

最も稼ぐアスリートの座を大坂と争うのは、同じ「日出ずる国」の選手だ。大谷翔平がアメリカで巻き起こした熱狂を説明するのは容易ではない。アメリカで史上最も有名なスポーツ選手と言えば、ベーブ・ルースとマイケル・ジョーダンだが、大谷は2人を凌駕する可能性を秘めている。

野球選手として直接的な比較対象になるルースは、投手として活躍した後、バッティングに専念。野球史上最も恐れられる打者となった。一方、大谷は7月4日、史上初めて投手と打者の両方でオールスターに選出された。ルースは間違いなく史上最高の野球選手だが、投打のどちらか一方に集中しなければならなかった。信じ難いペースで本塁打を量産したルースの活躍は前代未聞だったため、現実以上に偉大視され、漫画的な存在として受け止められた。

しかし、大谷はもっと途方もない、超人的な選手であり、より大きな畏敬の念を抱かせる。100マイル(約160キロ)を超える速球で打者を抑え込み、その直後にバットで記録的な速さの打球を飛ばす。にわかには信じ難い偉業であり、米大リーグのライバルたちは彼を神と比較している。

過去に最もよく神と比較されたアスリートと言えば、ジョーダンだ。ジョーダンがボストン・セルティックスとのプレーオフで1試合63得点を挙げた夜、当時世界最高の選手と呼ばれていたラリー・バードは、「あれはマイケル・ジョーダンの姿をした神だ」と言った。この世のものとは思えない運動能力、アクロバティックなダンクシュート、優雅な身のこなし、そして容姿──ジョーダンのおかげで米プロバスケットボールのNBAはアフリカ、アジア、南米で熱狂的ファンを獲得し、世界的スポーツに成長した。

全盛期のジョーダンは最高のディフェンダーであると同時に、最高のオフェンシブプレーヤーでもあった。他のスポーツでも絶対にお目に掛かれない選手だとされているが、投打両方でオールスターに選ばれた大谷はそれに匹敵するのではないか。

しかも、「二刀流」の難易度は野球のほうがずっと高い。投手と打者に求められる動作、視覚と手の動きの協調、筋肉の質や骨格はほとんど正反対だが、バスケットはよく似ている。大谷に比べると、「神様」ジョーダンもかすんで見える。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税

ワールド

ルビオ氏「日米関係は非常に強固」、石破首相発言への

ワールド

エア・インディア墜落、燃料制御スイッチが「オフ」に

ワールド

アングル:シリア医療体制、制裁解除後も荒廃 150
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 6
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story