コラム

トランプが新党を立ち上げればアメリカの第2政党になる

2021年01月27日(水)12時00分

1月6日、議事堂に乱入したトランプ支持派の「水牛男」 MIKE THEILERーREUTERS

<第45代大統領とは何だったのか。3つの結論から導き出せる混迷アメリカ政治の未来図>

トランプ大統領の4年間がようやく終わった。私は第45代大統領のアメリカ史における意味を理解しようと眉間にしわを寄せて考えてみた。

前回の大統領選で敗れた民主党候補のヒラリー・クリントンは、元大統領夫人の資格でトランプの大統領就任式に出席した。このときクリントンは、権力の継続性と移行は重要であり、新大統領に思慮深い統治を望むと親しい友人に語っていた。

だがトランプの演説が始まると、過去に例を見ない大統領の誕生が明らかになった。演説終了後、すぐ隣に座っていた共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領はクリントンのほうを向き、「これはひどいな」と言った。

それからほぼ4年後、ブッシュとクリントンがアメリカ民主主義の将来を危惧した場所のすぐ近くで、トランプ支持者が自国政府を攻撃した──。

結論① トランプ主義は攻撃の政治だ。

トランプが政界で力を発揮し始めたきっかけは、オバマ大統領の出生証明書に難癖をつけ、大統領になる資格がないと主張したことだった。選挙戦ではクリントンを監獄に送ると宣言し、外国人を激しく罵った。トランプは既成のエリートに対する人々の恐怖や嫌悪感をあおり立て、現状に不満を抱く層が認識する脅威を全て解決するスーパーヒーローに自分を仕立て上げた。アメリカ人の30%近くを占める熱烈な支持者にとって、トランプへの攻撃は自分たちへの攻撃も同然だ。トランプ批判が激しくなればなるほど、彼らの忠誠心も高まった。

結論② トランプ主義はイデオロギーや政策ではなく、感情の産物である。

そして既成エリートが考えるよりずっと強力だ。共和党支持者の46・6%は党よりもトランプに共感を示し、31%はトランプに自分の党を立ち上げてほしいと考えている。この数字はトランプが政治に関与し続ける限り、トランプ時代が続くことを意味する。支持者の忠誠心はアメリカ史上どの政治家よりも強い。現在の支持率はピュー・リサーチセンターの調査では29%。退任時の大統領では近年最低だが、強固な支持者は決して見捨てない。もしトランプが共和党と決別した場合、トランプ新党はアメリカ第2の政党になる公算が大きい。

結論③ トランプ主義は近視眼的かつ独り善がりで、現実をなかなか受け入れない。

問題解決のための処方箋も想像力もなく、最大の目標はどんな犠牲を払っても権力にしがみつくことだった。トランプは州や地方の当局者に不正行為を要求し、最高裁は自分に大統領の座を与えるべきだと言い放ち、副大統領に州の選挙結果を無視するよう求め、全てが失敗すると支持者を扇動して、連邦議会議事堂を攻撃させた。それでも支持者の74%が、トランプは選挙に勝ったと考えている。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国新築住宅価格、10月は-0.5% 1年ぶり大幅

ワールド

アマゾンとマイクロソフト、エヌビディアの対中輸出制

ワールド

米、台湾への戦闘機部品売却計画を承認 3.3億ドル

ワールド

ファイザー、肥満症薬開発メッツェラの買収を完了
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story