コラム

いよいよ始まるトランプvsバイデンの討論会はここに注目せよ

2020年09月29日(火)11時00分

討論会前の「期待マネジメント」は、討論会自体と同等に重要だ。多くの場合、肝心なのは議論を制することより、期待を上回ること。2000年大統領選に向けた第1回討論会では、民主党候補のアル・ゴアが共和党候補のジョージ・W・ブッシュを圧倒したが、ブッシュが前評判を大きく覆したため、実質的に引き分けと見なされた。

トランプはこれまでにバイデンを間抜け扱いし、史上最高の米大統領を自任する過ちを犯している。ハードルがこれほど低いなら、特に冴えたパフォーマンスでなくても、バイデンは楽にクリアできる。討論会の勝敗判定には態度やボディーランゲージ、自信の程、気質や活力がものをいうことが多い。

重要なカギを握るのが司会者の「参加度」だ。彼らは、その場で発言のファクトチェックを行うのか。トランプは虚偽や嘘を口にする傾向があるから、積極的に介入するタイプの司会者ならバイデンが有利だ。司会者が黙っているなら、有利なのはトランプ。トランプにはボスの風格があり、バイデンの討論の力量は16年大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントンよりはるかに劣る。

今回の討論会はアメリカの歴史上、最も予測不可能かつ重要なものになる可能性がある。トランプは米政治を襲った最大の竜巻で、その進路は予測できない。一方、バイデンは最も失言が懸念される米大統領候補かもしれない。

当日、討論会を見ながら食事をするなら、軽めにしておこう。最終結果について、私が自信を持って予想できることはただ1つ。胃がひっくり返る体験になるはずだ。

<2020年9月29日号掲載>

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ紛争は26年に終結、ロシア人の過半数が想

ワールド

米大使召喚は中ロの影響力拡大許す、民主議員がトラン

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story