プレスリリース

株式会社アイシンが生成 AI を活用し、聞き取りに困難のある人を支援

2023年12月05日(火)15時45分
日本マイクロソフト株式会社は、株式会社アイシンが開発したアプリ「YYSystem」がいかにLiD/APD のある方々の生活体験を向上させているかについてのストーリーを公開しました。

マイクロソフトでは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というミッションのもと、あらゆる人々をテクノロジの力で支援しています。

株式会社アイシンが開発した「YYSystem ( https://yysystem.com/ )」は、音声を認識し、文字などに変換するアプリシリーズです。聴覚に障碍のある方をはじめ、コミュニケーションに困難を抱えるあらゆる人々に利用されていますが、特に生成 AI を活用した Microsoft Azure OpenAI Service ( https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/ai-services/openai-service )の要約機能が LiD/APD (聞き取り困難症/聴覚情報処理障害)のある方々に役立っています。

ここでは、YYSystem がいかに LiD/APD のある方々の生活体験を向上させているかについて概要をお伝えします。
ストーリーの全文はこちらからご覧ください。
https://news.microsoft.com/ja-jp/features/231205-japans-aisin-helps-people-witsh-listening-difficulties-make-sense-of-what-they-hear-using-generative-ai/


画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/378297/LL_img_378297_1.png
YYSystemのアプリを使って会話する様子

添田洋美さんは幼少の頃から人の話を聞き取ることが苦手でした。家庭内でも、換気扇の音や流水音などの生活音があると、子供たちの声を聞き取るのに苦労しました。医師による検査を受けても耳に異常は見つからず、耳で聞いた言葉を脳で処理することができない状態の「LiD/APD (聞き取り困難症/聴覚情報処理障害)」があると診断されたのは、わずか3年前のことでした。

LiD/APD は日本での認知度が低いため、当事者は孤独感や疎外感を感じやすく、仕事を続けたり、日常的な会話に参加したりするのが困難だといいます。
「ただ頷いて、理解しているふりをします。ときどき待ち合わせの時間を間違え、友達から『聞いてなかったの?』と言われます。そして、約束を守れない人だと思われて、疎遠になってしまうのです」と、添田さんはよくあることとして打ち明けました。

添田さんは、今年初めから、株式会社アイシンが開発した音声認識アプリ「YYProbe」を使い始めました。YYProbe は、聴覚に障碍がある人々のコミュニティで広く使われていますが、LiD/APD のある人にとっては、マイクロソフトの Azure OpenAI Service が提供する新しい生成 AI を活用した要約機能が特に役立ちます。

生成 AI ツールは、大量のデータを合成してテキスト、コード、画像などを生成する大規模言語モデル(LLM)を基盤として構築されています。そうしたツールは、テキストを生成するだけでなく、要約することも可能です。

たとえば、添田さんは、母親が新型コロナウイルス感染症で入院した際に、医師の話を理解するために YYProbe を使用しました。添田さんはタブレットで YYProbe を使って医師が話す内容を理解し、情報を要約して、文章化したものを妹に送りました。

「(文字を)読む方がついて行きやすく、話が分かるようになります。それに、もし間違って聞き取っていても、読み直して確認できます」と添田さんは言います。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/378297/LL_img_378297_2.png
実際のアプリ画面

アイシンの研究開発チームは、当初、業務記録の作成を目的とした従業員用の音声文字化ツールとして YYProbe をコロナ禍に開発していました。ある時、社内の聴覚障碍のある従業員にアプリを使用してもらったところ、とても評判が良かったため、聴覚障碍者だけでなく、高齢者や外国人、その他コミュニケーションに困難を抱えているあらゆる人々が使用できるツールとして、YYProbe をはじめとする音声認識システム「YYSystem」の開発に乗り出しました。

アイシンがアプリの構築にマイクロソフトの Azure AI 音声 ( https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/ai-services/ai-speech )を採用した決め手は、「音声認識の精度が高いため」だと、研究開発チームを率いる中村正樹さんは説明します。マイクロソフトの Azure OpenAI Service を通して OpenAI の ChatGPT テクノロジを利用し、Azure AI 翻訳( https://azure.microsoft.com/ja-jp/products/ai-services/ai-translator )と組み合わせることで、要約機能と翻訳機能を実現しました。

YYSystem は、官公庁や小売店のカウンターに設置されたモニターでも運用されており、東京で開催されるデフリンピック 2025 では観客に利用される予定です。また、さまざまなコミュニティの活動や個人の生活でも活用されています。

現在、添田さんは、医師や同業界で働くメンバーを含むオンラインの LiD/APD 親支援グループを運営しており、たとえば、子供の学習支援として教室への機器の持ち込みを認めてもらうための活動等を行っています。

また、アプリ開発者とも協力しています。今年5月、添田さんの親支援グループはアイシンの研究開発オフィスを訪れ、開発者である中村さんとミーティングを行いました。中村さんは、ユーザーと継続的に連絡を取りながら、要望に応じて定期的に機能を追加しています。

添田さんの LiD/APD 親支援グループは、行間を広げて文章を短くすることや、発話者ごとに文字を違う色に変えることを提案し、その変更はアプリに反映されました。

中村さんによると、アプリは将来的に、テキストや音声だけでなく、画像、動画、グラフも入力や生成をして、コミュニケーションができるようになる予定とのことです。生成 AI によって、すでにそれが実現可能になっています。


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:FRB当局者、利下げの準備はできていると

ワールド

米共和党のチェイニー元副大統領、ハリス氏投票を表明

ワールド

アングル:AI洪水予測で災害前に補助金支給、ナイジ

ワールド

アングル:中国にのしかかる「肥満問題」、経済低迷で
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに
  • 3
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元で7ゴール見られてお得」日本に大敗した中国ファンの本音は...
  • 4
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 5
    メーガン妃の投資先が「貧困ポルノ」と批判される...…
  • 6
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン…
  • 7
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…
  • 10
    川底から発見された「エイリアンの頭」の謎...ネット…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つの共通点
  • 4
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 5
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 6
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 7
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 8
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 9
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中