Picture Power

【写真特集】欧州最貧国アルバニアの油田が住民の健康と環境を蝕む

BLACK GOLD

Photographs by JONAS KAKÓ

2023年08月22日(火)16時00分

パトス・マリンザ地域のジャレス村にある使われなくなった油井の近くでは、少女がさびた油貯蔵タンクに登っていた

<油田採掘は、環境破壊や農作物・家畜の汚染など、社会と環境に重大な問題を引き起こした>

バルカン半島に位置するアルバニアは、第2次大戦後の共産主義独裁政権時代はソ連、中国とだけ関わりを持ち、1970~90年代は「鎖国」状態という特異な歴史をたどった。そのため経済は停滞し、現在の1人当たり所得は約5260ドルで欧州最貧国の1つ。一方で、推定53億バレル以上の豊富な原油埋蔵量を有する。

最も有名な油田は、欧州最大規模のパトス・マリンザ油田。だが92年の資本主義経済の導入以降、その原油採掘の95%をカナダのバンカーズ・ペトロリアム(最近、中国企業が買収)などさまざまな企業が支配するようになった。

市場の激変は、湖の汚染や油漏れ、地下水の被毒、農作物や家畜の汚染など、社会と環境に重大な問題を引き起こし、パトス・マリンザ地域を不毛の地にしてしまった。

このフォトドキュメンタリーの焦点は、政府から開発権を得てパトス・マリンザで長年操業するバンカーズ・ペトロリアムの石油生産。日常の光景を通し、陸上油田が環境や住民の健康に与える影響が浮き彫りになる。

――ヨナス・カコ(写真家)

ppalba02.jpg

ボルシュ市の近くで油井の手入れをする労働者。原油は近くにあるアルバニア企業アニオ・オイルの施設で処理され、汚れた排水は施設裏の小川からビヨサ川に流れていく


ppalba03.jpg

前述の汚染水をビヨサ川に放出する前にためる池


ppalba04.jpg

フィエル市のロマ人地区で水を飲む女性。フィエルに近い製油所から石油や汚染水が川に流れ込み、多くの住民に健康被害の兆候がある。水道水は飲用に適さないが、貧しいロマの人々は口にする


ppalba05.jpg

バンカーズ・ペトロリアムの油井「J27-A」の近くを歩くヤギ。隣接するベリナ村の人々には、臭くて有毒な硫化水素が常に放出されていることが不安の種だ


ppalba06.jpg

パトス・マリンザ油田の中央処理施設でサンプルの品質を見るバンカーズの技術者

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東京株式市場・大引け=続落、5万円台維持 年末株価

ビジネス

〔マクロスコープ〕迫るタイムリミット? ソフトバン

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 演習2日

ワールド

オランダ企業年金が確定拠出型へ移行、長期債市場に重
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story