Picture Power

【写真特集】停電が続くガザの果てしない暗闇

GAZA'S LONGEST NIGHT

Photographs by CHLOE SHARROCK

2019年07月12日(金)18時30分

ガザ地区ガザ市のシャティ難民キャンプでパン店を営む家族にとって、炎は室内を照らす光であり、料理をしたり暖を取るためのものでもある

<深刻な電力不足で毎日最長20時間に及ぶ停電が続く一方で、ひと握りの富裕層は自前の発電機で不自由なく暮らす>

午後6時。パレスチナ自治区ガザでは、もうすぐやって来る日の入りと同時に辺りは暗闇に包まれ、多くの家庭ではろうそくに火がともる。ガザ地区は、深刻な電力不足によって毎日最長20時間に及ぶ停電に苦しめられているのだ。

電力不足の原因は、パレスチナ自治政府の主要組織ファタハと、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの対立だ。ファタハによってガザへの石油供給が制限され、ガザでは石油価格が高騰。石油を要する発電がままならなくなっている。ガザ地区の貧困率は80%を超え、一般家庭が発電機と石油を購入することは不可能に近い。その一方、ごくひと握りの富裕層は自前の発電機で不自由なく暮らすという「電力格差」が生まれている。

貧困層に追い打ちをかけたのが、イスラエルに肩入れするトランプ米政権だ。昨年9月、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を停止し、状況を悪化させた。見かねたEUが電力不足と保健衛生の支援に特化してUNRWAに追加の資金拠出を決めたが、今年4月にはパレスチナ自治政府がファタハ中心の新内閣を発足させ、パレスチナの分断は一層深刻化している。ガザの未来は暗闇に包まれたままだ。


ppgaza02.jpg

ガザ地区の港近くでLEDライトで照らしながら料理をする若者たち。ガザの脆弱な経済に電力不足が追い打ちをかける


ppgaza03.jpg

ガザ地区でも特に貧しい地域は日の入りとともに暗闇に包まれる。住民たちは懐中電灯や車のライト、火を使って辺りを照らす


ppgaza04.jpg

夜間にヒューズが飛び、暗闇の中で修理をするシャティ難民キャンプの住民たち。停電が頻繁に起きるため、今や修理作業は慣れっこだ


ppgaza05.jpg

1886年に創業した陶器製造業で生計を立てる一家。国外にも輸出してきたが、イスラエルによってガザ地区からの輸出が全面的に禁じられてからは売り上げが激減した


ppgaza06.jpg

ガザ市の病院の透析病棟は過密状態だ。透析治療は停電によって何度も中断され、時間も極端に長くなっている。移植手術など高度な治療を必要とする患者も、ガザ地区が封鎖されているため地区外で治療を受けることができない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価目標の実現は「目前に」、FRBの動向を注視=高

ビジネス

財新・中国サービス部門PMI、6月は50.6 9カ

ビジネス

伊銀モンテ・パスキ、メディオバンカにTOB 14日

ビジネス

カナダ製造業PMI、6月は5年ぶり低水準 米関税で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story