Picture Power

【写真特集】絶滅危惧種が織りなす人間模様

DISAPPEARING ACTS

Photographs by TIM FLACH

2019年03月20日(水)11時30分

<孤独な樹上人>ゴールデンモンキーのたてがみはファッションではなく中国中央部の厳しい寒さから身を守るためのもの。だが本当の「敵」は人間で、密猟や森林伐採により残された個体数は150だけとも

<動物たちがファインダー越しに見せる表情の中に、彼らを取り巻く環境の変化を読み取ることができる>

動物写真家のティム・フラッチが2年を費やして写真集『Endangered(絶滅危機)』を制作する道のりは、まさに冒険尽くしだった。ゴリラを探しに西アフリカ・ガボンに入り、ホッキョクグマを撮るために流氷の上に立った。ケニアでは、雄として最後の1頭だったキタシロサイに出合った。そのサイも今年3月に死亡が確認され、絶滅に近づいた。

絶滅危惧種の数を正確に把握することは難しいが、世界自然保護基金(WWF)によればその数は少なくとも毎年1万種に及ぶ。原因のほとんどが人間がらみで、狩猟、人口増加、都市化、そして魚介類の乱獲だ。

そんな人間に対するフラッチ流の警告は、動物たちが見せる人間的な表情を捉えること。12年に刊行した『More Than Human』では沈痛な面持ちのパンダなど、タイトルどおり「人間以上に人間らしい」彼らの表情を収めることに成功し、今回もその手法を用いて同じ感動を生み出した。

写真集には、ロードハウナナフシやセンザンコウなどなじみの薄い昆虫や動物も含まれている。愛くるしいパンダに目が奪われがちだが、ポリネシアマイマイと呼ばれるカタツムリも関心を払うに値する存在だ。

フラッチは人間界に目を向けることで動物たちの心を知るインスピレーションを得る。中南米のアマゾンに生息するフタイロタマリンの前かがみでしわを寄せ、白いたてがみに覆われた姿はまるで映画『スター・ウォーズ』に登場するヨーダだとフラッチは言う。「人が映像を見るときには、必ずある種の印象を伴う。動物たちがファインダー越しに見せる表情の中に、彼らを取り巻く環境の変化を読み取ることはとても重要だ」


ppend01.jpg

【滅びの地で】東アフリカで消えゆく沼地を餌場にするハシビロコウの精悍な顔つき


ppend02.jpg

【滅びの地で】絶滅の危機から救われガボンの森へ戻ったニシローランドゴリラが見せる悲壮な表情


ppend03.jpg

【大国の自負】中国政府の努力のおかげで近年、ジャイアントパンダの個体数は増加し「絶滅危惧種」指定から解除された。だが、主食である竹林の生育面積は土地開発の影響で減少している


ppend04.jpg

【絶滅間近なのに......】都市化と鉱山開発のために生育地が奪われているフィリピンワシだが、それでも変わらずスポーツ狩猟の対象になっている。今や世界に数百羽とも言われる


ppend05.jpg

【あのキャラに激似】フラッチが映画『スター・ウォーズ』のヨーダからインスピレーションを受けたというフタイロタマリンは南米アマゾンに生息する

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏の「政府効率化省」、国民はサービス悪化を懸

ワールド

戦後ウクライナへの英軍派遣、受け入れられない=ロシ

ワールド

ロシア、ウクライナ東部・南部のエネルギー施設攻撃 

ワールド

韓国、中国製鋼板に最大38%の暫定関税 不当廉売「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 7
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 8
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 9
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story