Picture Power

ガーナをむしばむデジタル機器の「墓場」

Digital Dump

Photographs by Pieter Hugo

ガーナをむしばむデジタル機器の「墓場」

Digital Dump

Photographs by Pieter Hugo

廃棄物の集積所で泥だらけで働くデビッド・アコレ(写真中央)。92年には有害廃棄物の管理を規制するバーゼル条約が発効したが、アメリカとアフガニスタン、ハイチは批准していない

 ガーナの首都アクラ郊外にあるスラム、アゴグブロシは電子機器の墓場だ。パソコンのマザーボード、モニター、ハードディスクなどが燃やされ、黒煙と悪臭が一帯を覆う。住民が、聖書に出てくる火で滅ぼされた都市にちなんで「ソドムとゴモラ」と呼ぶのも納得できる。

 絶望的な景色の裏には皮肉がある。過去数十年の間、欧米諸国は西アフリカの途上国を支援する目的で次々とパソコンを寄付したが、結局それが逆効果になった。寄付の名目で、欧米で要らなくなった電子機器の廃棄物がどんどん送られるようになり、村々には壊れて使いものにならない廃棄物があふれ返った。多くの地域がそうした廃棄物のごみ箱と化した。貧しい人々は廃棄物を燃やし、そこから出る有害物質にさらされながらも銅など金属を抽出する「宝探し」を行う。

 国連環境計画の試算によれば、毎年5000万トン以上の電化製品が廃棄処分になっている。しかし、例えばヨーロッパだけを見ても、こうした廃棄物のうちリサイクルされるのは25%にすぎない。廃棄物の処理については各国政府が規制を行っているが、寄付だと規制の対象になりにくいという現実がある。業者にとって寄付が手っ取り早い廃棄手段になっている。ただ、被害を受けているのはガーナの人たちばかりではない。米国務省は、ガーナに行き着いたパソコンのハードディスクから個人情報を盗む犯罪が横行していると報告している。そうした犯罪によって結局、欧米諸国の人々も被害者となっている。

 南アフリカ生まれの写真家ピーター・ヒューゴは、1年近くかけて「デジタル災害」の現場を記録した。彼の作品は、人類をさらに賢く、速く変化させた情報技術革命の負の側面を生々しく描き出している。

 写真集「Permanent Error」

PHOTOGRAPHS BY PIETER HUGO--YOSSI MILO GALLERY, NEW YORK

 【2011年8月24日号掲載】

MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中