最新記事
シリーズ日本再発見

ポイ捨て最多の渋谷に現れた「ゲーム×喫煙所」の真の目的

2022年06月03日(金)14時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ゲーミフィケーションで行動変容を促したい

遊びや競争といった人を熱中させるゲームの要素を、ゲームと関係のない領域に採り入れる手法を「ゲーミフィケーション」と呼ぶ。2010年にアメリカで提唱され、消費者の購入意欲を高めたり、利用者の態度変容、行動変容を促したりするマーケティング手法として広まってきた。

「ポイ捨て図鑑」(*1)も「投票型喫煙所」(*2)もユニークな取り組みで、まさにゲーミフィケーションだ。山下氏は動画マーケティングの会社を以前に起業しており、マーケティング手法には詳しい。コソドではこれらの企画を立てるなかで、成功事例をかなり調べ、スタッフたちと仕組みを考えたという。

(*1:「ポイ捨て図鑑」は現在も継続中で、プレゼントがもらえるキャンペーンの第2弾が6月20日頃から始まる予定。投稿対象のエリアが決まっているので注意)
(*2:「投票型喫煙所」は終了時期は未定で、当面の間実施予定)

参考事例の1つは、インフラの老朽化を防ぐため、本来は自治体が行うべき「下水道マンホールの蓋のデータ収集」を、市民にゲームアプリで参加し、撮影してもらうことで解決する「マンホール聖戦」。全1万個ほどのマンホールが3日で撮影し終わった昨年8月の渋谷区を皮切りに、日本各地で開催されている。

「投票型喫煙所」もヨーロッパで既に成功事例がある。ロンドンのサットン地区では、これによりポイ捨てたばこの量が46%削減したとされる。これが山下氏が「以前から考えていた企画」で、山下氏によれば、渋谷の「投票型喫煙所」では最初の週末後、吸い殻やペットボトル、空き缶などのポイ捨て量が通常の週末の10分の1になっていた。

japan202206-shibuya-7.jpg

「灰皿」の究極の二択の1つは「喫煙所が増えると、ポイ捨ては減ると思いますか?」。コソドのメッセージが込められている 写真提供:コソド

「たばこは企業が参入しづらい領域だし、マネタイズも難しい。むしろ僕たちのような小規模なグループのほうが、頑張れば社会貢献をしやすい」と、山下氏は話す。「それぞれの人がお互い好きなものを認め合える社会の一助になればと思っています」

とはいえ、1民間企業のできることには限界もある。国や自治体が施策としてたばこ規制を進めている以上、喫煙所の整備にも本腰を入れてもらいたいところだ。

山下氏の元には現在、全国各地の自治体から「ポイ捨て図鑑」を知って問い合わせが相次いでいるという。こうした遊び心のある取り組みが今後、さらに広まっていくことを願いたい。

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡 ガス漏れか

ビジネス

午前の日経平均は続伸も値幅限定、クリスマス休暇で手

ビジネス

歳出最大122.3兆円で最終調整、新規国債は29.

ワールド

マクロスコープ:核融合電力、国内で「売買契約」始ま
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中